研究課題/領域番号 |
19K02504
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
渕 真輝 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (20362824)
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研究分担者 |
臼井 伸之介 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (00193871)
藤本 昌志 神戸大学, 海洋教育研究基盤センター, 准教授 (70314515)
広野 康平 神戸大学, 海事科学研究科, 准教授 (80346288)
中井 宏 大阪大学, 人間科学研究科, 准教授 (90583526)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 船舶 / 衝突回避判断 / 操船者 / 状況認識 / 現場 / フィードバック |
研究実績の概要 |
海運は地球規模の重要な輸送モードであり、島国であるわが国では貿易の殆どが海上輸送による。海上輸送で用いられる船舶の操縦は、その質量の大きさ等から自動車などと比較して“遅い動き”を扱うため、他の交通モード等の先行研究の知見をそのまま適用することができない。また遅い動きを扱うことからフィードフォワード型の判断が必要となり、操船者の経験が重要であると言われている。本研究は船舶の衝突回避判断の基になる状況認識の経験差を明らかにしたうえで、その知見を基に衝突回避判断を安全側へシフトさせるためのプログラムを策定し試みることを目的としている。 本年度は、衝突回避判断の事例収集を行った。ヒアリング調査と神戸大学海事科学研究科附属練習船深江丸における実際の衝突回避判断を対象とした。調査のポイントは次の2つであった。A)記憶に残っている衝突回避判断経験を収集(何かしらの困難を伴っているため) B)衝突回避判断に関わる勘違い経験を収集(“現状の理解”のエラーであるため)。深江丸における事例調査も現場で事例を観察しながら、後に操船者へヒアリングを実施することとなったので、いずれもヒアリング調査形式となった。外国航路の大型船操船者にヒアリング調査を実施することは、日本人船員数が少ないこと、さらには陸上勤務中である船員を対象に依頼したことから調査は困難であったが、最低限の事例収集を行うことができた。ヒアリング調査の結果として、困難な理由としては、環境、漁船、第3船というキーワードが抽出された。一方エラーについては報告されなかった。これは自身の失敗を報告することになるからだと考えられた。環境には地形や気象が挙げられ、操船の制限となるものであった。漁船については、予測不能な航行が、第3船については衝突回避方法によって状況が変わるという困難さが報告された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ヒアリングによる衝突回避判断の事例収集を行った。外国航路の大型船操船者へのアクセスはそもそも日本人船員数が少ないこと、さらには陸上勤務中の船員を対象に依頼したことから調査は困難であったが、最低限の事例集を行うことができたと考える。ヒアリングのポイントとして2つを設定していたが、エラーについては報告されなかった。一方で記憶に残っている衝突回判断に関しては、協力者は概ね協力的であり、実に詳しく述べていただいた。中にはエラーかと思われる事象もあったがが、明確にエラーと判断することはできなかった。当初計画したヒアリング方法で実に興味深い事例収集ができたことは大いに評価できると考える。一方で協力者確保に時間と労力を要し事例が少ないことが問題である。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると評価した。
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今後の研究の推進方策 |
衝突回避判断の事例収集を行い、最低限の事例集を行うことができたと考えるが、もう少し事例数を増やす努力を行い事例を収集する必要がある。また次の段階として収集した事例から操船シミュレータのシナリオ作りが必要である。既に収集した事例の中からシナリオを検討しシナリオを作成しながら、新たに収集した事例から適宜シナリオ作成にかかる必要がある。 しかしながら、今年度においてはCOVID-19が多大な影響を及ぼすことが否定できない。本研究は基本的に人間を対象としているため、研究が遅れるものと考えられる。ヒアリングについてはオンラインによる方法も検討中であるが、実行可能という確証は得られていない。またシナリオの作成について検討はオンラインで行うことも検討するが、実作業は操船シミュレータ現場でしか行えないという問題がある。どこまで影響があるか予想不可能であるが、認められるかどうかという問題があるが、研究を一年延長することも視野に入れなければならいと考える。
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