研究課題/領域番号 |
19K02510
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研究機関 | 福山市立大学 |
研究代表者 |
小野 方資 福山市立大学, 教育学部, 准教授 (30569827)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子どもの権利 / 生活指導(生徒指導) / ゼロ・トレランス策 / 教育人権 / 新自由主義 |
研究実績の概要 |
1、関連文献・資料の収集・吟味:ゼロ・トレランスの方針(Zero Tolerance Policy 以下、ZTP)に基づく生徒指導について、政策文書や教育言説資料の収集と吟味を行った。併せて、「生徒指導」の研究文献、「生活指導」の研究文献の収集と講読をした。2、実態の調査研究:今年度は主として、広島県、そして福山市におけるZTPに基づく生徒指導の実態の研究と分析をした。その中で重点的に取り組んだのは、以下の二つであった。(1)ZTPの考え方の出現と教育への波及過程についての歴史研究をした。このために、1994年の警察機構の変革にまでさかのぼり、1990年代~2000年代の文部科学省における生徒指導関連政策文書の内容の変化について研究した。(2)広島県における生徒指導関連政策の歴史研究をした。これらに掲載されている学校教育法第11条の解釈が、子どもの権利保障に矛盾することについて分析した。3、聞き取り調査:福山市などのZTPに基づく生徒指導を実施している(実施していた)地域で働く教員などに、生徒指導の実態についてインタビューをした。4、学会発表・論文の状況:日本教育法学会や日本生活指導学会で研究成果の報告を行った。学会発表をふまえて、論文化に取り組んでいる。福山市で展開していた「生徒指導規程」(ZTPに基づいていると福山市議会で発言され、各学校で生徒指導の準則として作られていたもの)の「作り直し」が、福山市議会で教育長により表明されものの、その「作り直し」の過程の実態がどういうものであり、教育現場で何が起きていたかについての論文を、雑誌『教育』889号に載せた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画の1年目にあたる令和元年度は、全体としては順調に進み、研究成果として、いくつかの学会発表と論文とをまとめることができた。ZTPに基づく生徒指導の実態調査研究、そして、福山市などZTPに基づく生徒指導を実施している地域で働く教員などに、生徒指導の実態についてのインタビューもすることができた。この中から研究発表につなげることもできた。しかし、新型コロナウイルス禍により、調査のために出張することができなくなったので、この点が次年度の研究課題となる。
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今後の研究の推進方策 |
今後、すでに聞き取ったインタビューの分析をし、ZTPに基づく生徒指導の実態や、子どもの権利侵害の実相を明らかにしていく必要がある。この生徒指導が広がった過程について、広島県や福山市の場合を調べていくにあたって垣間見えたのは、この指導が導入される前史に「シラバス運動」があったということであった。この運動を「学力」向上を目的とした学習内容のスタンダード化ととらえた場合、これとZTPに基づく生徒指導とがどう関連していたのかが研究の課題となる。この点の聞き取りや資料の収集につとめ、分析を進めていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度内に新型コロナウイルスが流行し、出張による研究が困難になった。今年度は、新型コロナウイルスの流行状況に注意をしながら、現地に赴いての研究につとめる計画である。
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