1、関連文献・資料の収集・吟味:ゼロ・トレランスの方針(Zero Tolerance Policy 以下、ZTP)に基づく生徒指導について、政策文書や教育言説資料の収集と吟味をした。併せて、「生徒指導」の研究文献、「生活指導」の研究文献の収集と講読をした。 2、実態の調査研究:今年度は(1)主として、ZTPに基づく生徒指導の背景にあった教育政策の実証的分析をした。その中で重点的に取り組んだのは、広島県における生徒指導関連政策の歴史研究をした。今年度の研究では、これらの文書に記載されている「特別な指導」の出現する経緯と、ZTPとの結びつきの経緯を明らかにした。これに加え(2)2020年11月21日に福山市教育長による校長に対する「パワーハラスメント」があったと報道されたのを受け、この事案の調査のために作られた委員会の報告書を情報公開請求し、分析した。この分析に基づき、上掲事案を教育長による校長へのZTPと位置づけることができ、教育基本法第16条(不当な支配の禁止)に反しているのが明らかになった。ZTPが教育行政内にて当然に横行する状況があったのである。 3、聞き取り調査:今年度も引き続き、福山市などのZTPに基づく生徒指導を実施している(実施していた)地域で働く教員等に、生徒指導の実態についてインタビューをした。 4、学会発表・論文の状況:日本生活指導学会へ、上掲2(1)に記載した研究成果を投稿し、掲載された。小野方資「ゼロ・トレランスに基づく懲戒を目的とした「特別な指導」の法学的検討―広島県教育委員会「生徒指導ハンドブック」の批判的検討を手掛かりに」『生活指導研究』No.38、2021年9月、75-84ページ。また(2)の分析も日本教育法学会にて発表をし、小野方資「校長はなぜ教育長に追従するのか」教育科学研究会『教育』914号、2022年2月、60-67ページに掲載された。
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