研究課題/領域番号 |
19K02511
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研究機関 | 東京成徳大学 |
研究代表者 |
青木 研作 東京成徳大学, 子ども学部, 教授 (20434251)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | イギリス / 教育行政 / 学校主導型制度 / マルチ・アカデミー・トラスト / ティーチング・スクール・アライアンス / 地方当局 / 学校改善支援 |
研究実績の概要 |
本年度は、以下の2点についての調査研究を実施した。 1.保守党政権下における学校改善支援政策の分析 現在の保守党政権下の学校主導型制度において、学校改善は次のような仕組みで行われている。学校改善の役割を直接担っているのは、NLE(National Leaders of Education)やSLE(Specialist Leaders of Education)といった優れたリーダーがいる学校である。そして、そうした学校が他の学校を支援しやすいように、学校間連携の枠組みが用意されている。その中心的なものが複数のアカデミーが一つのトラストの下で経営されるマルチ・アカデミー・トラスト(MATs)という制度である。2019年時点でイングランドには1,170のMATsがあり、29のMATsが26校以上、85のMATsが12~25校を抱えているが、多くのMATsは小規模であり、598のMATsは5校以下で構成されている。なお、学校支援機能の点からは規模が小さいことへの懸念が指摘されている。また、独立した学校同士が連携して学校改善に取り組むティーチング・スクール・アライアンスという制度も存在する。こうした学校間連携の枠組の効果については、現保守党政権は肯定的に捉えているが、その効果を疑問視する研究もある。また、地域によって学校間連携の進捗状況に大きな差があることから、学校主導で全国に公平な学校改善サービスの提供を行うことの限界も指摘されている。 2.コロナ禍における学校改善支援政策の分析 新型コロナウイルスの感染拡大が深刻なイギリスでは、2度の全国的な学校閉鎖が行われるなど、学校教育に多大な影響が出ており、コロナ禍における学校改善支援政策の動向も射程に含みながら研究を進めている。現在までのところ、学校主導型制度の方針は維持されており、より規模の大きな学校間連携が求められている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現保守党政権下で進む学校主導型制度における学校改善支援主体の機能について研究を行うために、2020年度は、第一にマルチ・アカデミー・トラストについての現地調査、第二にマルチ・アカデミー・トラストに関する文献調査、第三にマルチ・アカデミー・トラスト以外の学校改善支援主体に関する文献調査を行う予定にしていた。第一については、新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、訪英自体をあきらめざるをえなくなり、実施することができなかった。第二と第三の文献調査については、学校改善支援主体のホームページ等を通じてさまざまな情報を得ることができ、その機能についての理解を深めることができたが、そうした成果を論文としてまとめるというところまで、研究の水準を高めることができなかった。 2年目までにマルチ・アカデミー・トラストに関する一定の研究成果を上げ、3年目でマルチ・アカデミー・トラスト以外の学校改善支援主体の研究に取り組むことで、現保守党政権が進める学校主導型制度における学校改善支援主体の機能を総合的に明らかにしようと考えていたが、現時点で、マルチ・アカデミー・トラストに関する研究成果を上げることができていない。そのため、進捗状況については、「遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究については、以下の3つの方策に基づき進めていく。 第一に、マルチ・アカデミー・トラストに関する文献調査を引き続き進めるとともに、文献調査のみで論文をまとめることができるよう、文献調査の分析精度を高める。 第二に、マルチ・アカデミー・トラスト以外の学校改善支援主体、例えば、ティーチング・スクール・アライアンスや学校改善に関わる民間団体などについても、引き続き文献調査を進め、学校主導型制度における学校改善支援の全体像を把握できるよう努める。 第三に、新型コロナウイルスの感染リスクやイギリスの入国管理等の状況について先が見通せない中ではあるが、マルチ・アカデミー・トラストへの現地調査をなんとか実現させ、その実態を明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していたイギリスでの調査がコロナウィルスの感染拡大の影響で実施できなかったため。
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