研究課題/領域番号 |
19K02514
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研究機関 | 和光大学 |
研究代表者 |
辻 直人 和光大学, 現代人間学部, 教授 (70523679)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 国際交流 / 日米関係 / 日本人留学生 / 北米キリスト教会 |
研究実績の概要 |
2020年度は当初予定していたアメリカやフランスへの海外史料調査が新型コロナウィルスの影響で全く行えず、計画していた調査ができなかった。今年度はこれまでの科研費調査で収集していたものの十分に分析活用できていなかった史料の整理と考察を中心に進めた。 今年度の成果としては、既に科研費研究で明らかにしてきた湯浅八郎の生涯について、特に戦時下における彼の活動がどのような世界平和や国際交流を促すことになるのかを考察した。湯浅は1938年12月からマドラス会議に出席し、翌年1月にアメリカへ渡り、マドラス会議の成果や日米関係をテーマに講演をして回り、会衆派の集会に参加したり、大学の特別講師をしたりと各地の集会に参加していた。日米開戦後もアメリカで過ごした経験から、湯浅は狭いナショナリズムを超えて国際交流の必要性を強く実感している。その経験が戦後日本に帰国して以降の活動にも影響を及ぼしていることが想定されるが、戦後の展開は新年度に追求する予定である。 また、これまで史料の収集はしてきたものの十分に分析がされていなかったものに、戦後になって組織されたInterboard Committee for Christian Work in Japan(IBC) 及び内外協力会に関する膨大な史料群がある。2020年度はこの史料リストを作成し、冊子としてまとめた。この団体は、終戦を受けて日本の教会やキリスト教学校の復興のため人的剤的支援をするために組織され、戦後は日本から留学生の派遣活動も実施している。戦後の日米交流の一端を明らかにするためにも必要な史料であり、2021年度に一層の分析を進めることとする。これまでこの史料を用いての研究はほとんどなく、国際交流史の新しい一面を明らかにすることができる。そのための基礎作業として、史料リストを作成できたことは2020年度の大きな成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の計画であった海外史料調査が全く行えなかったことが最大の理由である。まだインターネットで公開されていない史料については、外国の史料室へ直接にメールで尋ねることができても、実物を見ることができなかった。これまで収集してきた史料データは厖大であるため、それらの史料を改めて見返すことで新たな視点を見出す方向性を今後見出す必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も海外史料調査は難しそうな状況であるため、予定を変更して、今年度は可能な限り国内調査を実施したい。現時点では、安中市、京都市、金沢市、大阪市、東京近郊などでの調査を検討している。 また、既に集められた史料の整理を進めるため、アルバイトを雇い、史料リストの作成を行うこととする。 こうした調査と史料整理により、これまで解明されてこなかった戦前から戦後にかけての国際的な学術文化交流の動きの一端について、明らかにし、論文等で公表していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画であった史料調査、特に予定していた2度の海外史料調査が新型コロナウィルスの影響で全く実行できず、当該年度は国内での調査にも行くことができなかったため、旅費が一切使用できなかった。そのため、大幅に使用額に違いが生じた。 次年度も海外調査は難しそうだが、国内調査は何度か行いたい。また、史料整理のために人件費を使用することで、研究費を用いさせていただきたい。
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