研究課題/領域番号 |
19K02515
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
田中 博之 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (20207137)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 道徳科 / 単元学習 / 道徳ワークショップ |
研究実績の概要 |
2時間小単元のモデル化の研究においては、理論研究で明らかになった単元モデルの構成手法に基づき、道徳科教科書の読み物教材を活用した2時間小単元を構成し、それを研究協力校4校において活用してもらい、道徳ワークショップの授業開発と実践を行った。 その結果、2時間小単元による道徳科の実践には、次のような10タイプが存在することが帰納的に明らかになった。① 1時間目は教科書教材に沿って考え(習得)、2時間目は身近な題材を自分事としてとらえる。(活用)② 1時間目は教師の課題設定に沿って考え、2時間目は自分で問いを作って対話し解決する。③ 1時間目は主となる内容項目から考え、2時間目は副となる複数の内容項目を関連付けて考える。④ 1時間目は教科書教材に沿って考え、2時間目は関連する副教材を用いて多面的・多角的に考える。⑤ 1時間目は教科書教材に沿って考え、2時間目に物語の続きや行間を想像させて深く考えるようにする。⑥ 1時間目は主に教科書教材に基づく読解と内容項目に関する自分の考えを交流し、2時間目に一人ひとりが深く考えて成長した自分の考えを発表する。⑦ 1時間目は教科書教材や関連資料をもとにして道徳的価値について論理的に思考し、2時間目に道徳的行為の在り方に関して自分事として振り返りや自己宣言をしっかりと書いて発表する。⑧ 1時間目は教科書教材を中心とした学級内での学習を行い、2時間目に地域のゲストティーチャーや異学年・異学校種の児童生徒を呼んで多様な考え方や視点を取り入れた授業を展開できる。⑨ 1時間目は道徳的行為の在り方を考えて自分が実践すべき行動を計画し、1時間目の後の「道徳実践週間」の振り返りを2時間目に行い考えを深める。⑩ 1時間目は教科書教材の基礎的な読解を中心に行い、2時間目に教材に内在する内容的・認識的な飛躍をスモールステップで2時目に埋めていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度においては、新型コロナウイルス感染防止のため、研究協力校において、計画していた研究授業を実践することが十分に行えなかった。およそ、計画の半数の授業開発と実践に留まることになった。ただし、2時間小単元による道徳科の実践の10タイプを実証的に構成するには十分の実践数をぎりぎり確保することはできた。最終年度である2021年度には、感染防止に努めながら実践数を確保することに努力したい。
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今後の研究の推進方策 |
それぞれの授業においては、授業記録ビデオを用いた再製刺激法により教師インタビューを実施して単元モデルの評価フィードバックを受けるとともに、道徳力アンケートの結果を統計的に分析した評価結果をもとにして、単元モデルを修正・改善する検証サイクルを実施していく。 また、学術研究の成果を生かし、学校での実用化を前提とした研究成果の公表をねらいとして、インターネット上に「道徳ワークショップ・ポータルサイト(仮称)」を作成して、本研究で開発した単元モデルをはじめとして、授業実践事例の映像アーカイブ、道徳ワークショップの実践マニュアル、道徳力アンケートとはがき新聞といった評価ツールと活用事例の映像アーカイブ等をオンラインで提供する計画である。 この研究によって明らかにしたいことは、本ポータルサイトから提供する資料やファイルの条件とそのダウンロード状況から評価できるサイト運用のあり方である。道徳科を実践する各学校の教師にとって、何が有用で必要な情報であるのかを合わせて解明していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、新型コロナウイルス感染防止のために、予定していた研究協力校での道徳科の授業開発と実践の回数を減らさざるを得なかった。そのため、各校への研究調査旅費の予定額を全額執行することができなかったため。 2021年度については、感染防止に十分留意しながら、緊急事態宣言の期間をうまく回避しながら、研究協力校での授業開発と実践の回数を十分に確保して、予算の着実な執行を図りたい。
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