研究課題/領域番号 |
19K02516
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研究機関 | 東洋英和女学院大学 |
研究代表者 |
尾崎 博美 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 准教授 (10528590)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 創造性 / 社会的協働学習 / 家庭-地域-学校の連携 / 多重知能 / 体験と知識の包括 / 教育リソース |
研究実績の概要 |
2019年度は、本科研の初年度であり、文献調査を中心とした理論構築を行った。対象とした文献はJ.デューイ、J.R.マーティン、H.ガードナーであり、特に、進歩主義教育の視点から現代の「協働性」概念を構築する上で必要となる分析を行った。 また、2019年5月にはアメリカのボストン市、ニューヨーク市におけるフィールド調査を実施した。調査対象は、Boston Children's Museum、National Museum of American History等の教育リソース、及びProgressive Educationをカリキュラムに取り入れた教育実践を行っている学校である。 フィールド調査及び、インタビュー調査をもとに、状況的、文脈的な「知」の在り方に関して、各学校の実践がいかなる捉え方をし、それを実際の教育的営みとして顕現させているかの検討を行った。国内のフィールド調査としては、兵庫県、宮城県における学校外教育リソースの事例調査を行った。本調査では、空間に埋め込まれた教育リソースを通していかに言語的リソースの学びが生成しうるか、その仕掛けと装置についての検討を行った。 国内での研究会には、5月に北海道、8月に盛岡での研究会に参加し、科研課題に関する知見、特に教育理論と教育実践との間を連接する教育言説の分析を行った。研究成果としては、本科研課題に関する「自発性」「身体」「他者」「理性」についての分析を行った結果を『<改訂版>教職用語辞典』に活用した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度は、本科研の初年度であり、文献調査を中心とした理論構築、およびフィールド調査の実施を計画していた。文献調査は、J.デューイ、J.R.マーティン、H.ガードナーの著作および関連する研究成果を中心に、とくに進歩主義教育の理論と実践から、本研究課題である「社会的協働学習実践」の理論枠組みの構築を行うことができた。フィールド調査については、当初予定していた国内におけるフィールド調査を、概ね予定通り実施することができた。特に、地域の美術館や図書館を対象とした調査においては、「社会的協働学習実践」の実践を行う地域-家庭-学校の連携を担うエージェントとしての教育リソースの在り方を実際に考察することができた。さらに、2019年5月に実施した調査では、アメリカにおける進歩主義教育学校の実践についてフィールド調査・インタビュー調査を実施することができ、これは、当初の研究計画よりも早い段階での実施となり、状況的、文脈的な「知」の在り方(生活経験・空間がもつ教育的効果)に関する実践的検討の実施となった。 一方、2020年2月下旬から3月上旬に予定していたイタリアでのフィールド調査及び研究会の実施が新型コロナウィルス感染症の影響を受けて延期となったため、一部の研究計画を変更する必要性が生じている。 以上のことから、後半の研究計画の変更も踏まえて、2019年度全体としては、おおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、2019年度に行った文献調査の結果を踏まえ、「社会的協働学習実践」の理論枠組みをフィールド調査を通して精査することを中心とする。 フィールド調査の主たる調査対象、研究対象としては以下を予定している。 1)学校と NPO 法人との協働による活動、2)学校と民間組織との協働による活動、3)学校と高等教育機関との協働による活動、4)学校外の教育リソース同士の協働による活動 上記のフィールド調査を通して、①「状況的、文脈的な「知」の在り方(生活経験・空間がもつ教育的効果)」②「生活知・実践知の獲得方法・教授方法」について具体的・実践的な調査・分析を行い、「社会的協働学習」の実践モデルを構築するための材料を得ること目指す。 しかしながら、新型コロナウィルス感染症の拡大対策状況を踏まえ、安全にフィールド調査が行える時期と方法を構築することが急務である。本研究課題を推敲する上で最も安全かつ効果的な時期と方法を精選し、計画を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年2月、3月に予定していたイタリア、ボローニャ市におけるフィールド調査及び研究会について、新型コロナウィルス感染症拡大のために時期を延期することとなった。 調査対象は本科研の主旨に基づいて精選されたものであるため代替することは不可能であり、適切な調査が行える時期と方法を構築するため、次年度への繰り越しを行った。
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