研究課題/領域番号 |
19K02516
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研究機関 | 東洋英和女学院大学 |
研究代表者 |
尾崎 博美 東洋英和女学院大学, 人間科学部, 准教授 (10528590)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 創造性 / 協働性 / 「知」の様式の再構築 / 「教える-学ぶ」営み / 関係性 / ケアリング / 概念分析 |
研究実績の概要 |
2020年度は、前年度の文献調査の結果を踏まえ、学習における「協同」「協働」に関して概念分析を中心としたモデル化を行った(尾崎博美、「教育における「協働」とは何か―「ケア」の視点から「プロジェクト」概念を問うことの意義―」、2021刊行予定)。当該の分析においては、J.デューイの「プロジェクト」概念、J.R.マーティンの「ケア」概念に着目し、「教授-学習」の営みにおいて、単に「教える」と「学ぶ」とを対立させるのではなく、むしろその間における相互作用や関係性によって生起する「知」の様式に着目する必要性を指摘した。特に、「ケアリング」の視点から「プロジェクト」概念を再検討することを通して、「プロジェクト」における「教師」の「受動性(受容性)」がもつ積極的な役割・効果を提示した。 また、フィールド調査については新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえて、調査計画の再編成を行った。「学校外教育リソース」及び「教育エージェント」の実例調査として、岩手県の施設をオンラインで訪問し、岩手大学の授業との連携について分析を行った。また、宮城県のNPO法人に関するオンライン調査を実施し、次年度以降のフィールド調査の準備を行った。 さらに、前述の概念分析とフィールド調査を通して「社会的協働学習」の実践モデルの構築するうえで、教育概念及び文化的背景に関する国際的な東西比較を行い、その一部をThe Routledge Encyclopedia of Modern Asian Educators: 1850-2000(2021年刊行予定)に上梓した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度は当初の予定では、国内・国外におけるフィールド調査を主たる研究活動内容として設定していた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、国外はもとより国内におけるフィールド調査も実施が困難となった。インタビュー調査及び事前準備の資料収集についてはオンライン調査で実施することができた。地域・施設といった要素を含んだより包括的なフィールド調査については、調査対象先と調整し、2021年度以降に実施する予定である。 文献調査・概念分析の部分については、おおむね計画通りの進捗をみることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題の今後の推進方策として、以下の3点を予定している。 1.文献調査・概念分析の精緻化を進め、特に国際比較における東洋・西洋の差異と共通点について、「協働」「ケア」「関係性」といった概念レベルからの分析を行う。同時代の比較に加えて、時代背景の変遷を分析視点として加えることで、日本における「協働」「ケア」「関係性」等を基盤とした「教える-学ぶ」営みについても再提示を試みる。 2.新型コロナウイルスの影響により計画の変更が余儀なくされているフィールド調査について、国内を中心に訪問での調査を実施する。安全性確保のためにオンラインでの調査と並行させながら、できる範囲での訪問調査・インタビューを実施する。特に「学校外教育リソース」及び「教育エージェント」については、災害・緊急事態下における対応や活動への影響も分析視点に含めることとする。「学校」の活動に制限がかかる際に、地域・NPO法人等の「学校外教育リソース」がそれを補填・包括する役割を担う可能性を検討する。 3.文献調査とフィールド調査を通して、生活知・実践知に関する先行研究文献及び資料の収集と分析を進める。特に、状況的・文脈的な「知」の在り方(生活経験・空間がもつ教育的効果)、生活知・実践知の獲得方法・教授方法を分析することで、前述の1.2の分析結果のより精緻なモデル化を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究課題の2020年度は、国内・国外のフィールド調査を研究計画の中心とし、そのための出張旅費を使用額予算として計上していた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の拡大により、実際に調査対象地を訪問することは困難となり、オンラインで実施可能な範囲への調査を実施した。その結果、当初計上していた出張旅費の利用は大幅に減額となったため、次年度使用額が発生した。フィールド調査は新型コロナウイルス感染症の状況を見極めながら、次年度以降に実施予定である。
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