研究課題/領域番号 |
19K02521
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
青木 真理 福島大学, 人間発達文化学類附属学校臨床支援センター, 教授 (50263877)
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研究分担者 |
高橋 純一 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (10723538)
原 義彦 秋田大学, 教育学研究科, 教授 (70284825)
杉田 政夫 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (70320934)
柴田 千賀子 仙台大学, 体育学部, 准教授 (80639047)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | キャリア形成支援 / 包括的・連続的支援 / 切れ目のない支援 / デンマーク / ドロップアウトした若者支援 / インクルーシヴ / 子育て支援 |
研究実績の概要 |
本研究はデンマークの市民中心主義のキャリア形成支援の仕組みを調査し,日本の社会で長期的視点に立った切れ目のないキャリア形成支援(包括的・連続的なキャリア形成支援)モデルを探究することを目的としている。このモデルは,すべての人がその能力を十全に発揮して社会に参加できることを目標とし,生活者の民主主義(小池 2017)の理念を基礎としながら,子育て支援,ドロップアウトした若者の再適応支援,インクルーシヴなコミュニティ形成をつなげようとするものである。「長期的視点に立った切れ目のない」支援とは,妊娠期から青年期後期までの縦のつながりと,行政の枠組みを越えた横のつながりを実現することを意味する。 2019年度は,8月末から9月にかけてデンマークとノルウェーを訪問し,聞き取り調査等を行った。訪問先と内容はでマークで(1)若者センター:若者支援の新しい枠組みであるKUI(関連する若者サポートを統合したもの)についての聞き取り調査,2)FGU(従来の生産学校を再構成した若者支援機関)での聞き取り調査,(3)学習障害に特化した特別支援学校での聞き取り調査,(4)生涯教育機関であるフォルケホイスコーレでの聞き取り調査(5)森のようちえんの視察,ノルウェーでは音楽療法を教育の柱とする特別支援学校の視察などである。 また,日本での長期的視点に立った切れ目のないキャリア形成支援のモデルを探究するために「人の育ちと人育てについて考える会」を発足,教育,臨床心理学,特別支援教育,保健医療等の専門家を集めて,情報共有と議論を行った。今後この会を年間2回~3回開催して,特定のトピックについての情報共有を行い,その成果を大学の紀要等に発表していく予定である。 デンマークでの調査結果とそれにもとづく日本でのモデル構築に関する論考は,福島大学学校臨床支援センター紀要第2号に掲載される予定である(現在投稿中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度はデンマークで①妊娠期の支援・子育て支援の調査,②若者の再適応支援を行う新しい枠組みの調査,③特別支援教育と障害者の就労支援の調査を行うことを計画していた。これらについてはおおむね達成することができた。一方,国内の自治体でキャリア形成支援のための社会資源を調査するという計画については,A市で切れ目のない支援,特に不登校からひきこもりに移行する可能性のある若者の行政の枠組みを越えた支援を行う可能性を探究したが,行政の枠組みを越えることが難しかった。A市での探究を継続する一方で,特定の自治体に限定せず多領域の専門家が集い学際的な情報共有と探究を進める会を発足させ,そこにおいてキャリア形成のモデルを構築していこうとしている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度にもデンマークでの調査を計画していたが,全世界的なコロナウィルス感染拡大の状況ではそれは実現できそうにない。今年度前半は,これまでの調査結果を整理して議論を行うことを中心とし,後半においてコロナ問題が落ち着いていたら,国内で,いくつかの比較的小規模の自治体の子育て世代包括支援センターの取組,特別支援教育における個別支援計画の取組の実際に焦点をあてて,聴き取り調査を行いたい。それらをデンマークでの調査結果と照らし合わせながら論考を進め,大学の紀要等に論文として投稿したいとも考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者1人が学内の業務のために北欧渡航調査に参加できなかったこと,また1人は渡航調査に参加したが,旅費が予定額を下回ったことがその理由である。次年度使用額と合わせて230万円ほどになる。当該年度の調査成果から次の調査課題が明確化したので次年度も渡航調査を行いたいが,コロナ感染拡大の状況下ではそれを実現できるかどうかは不明瞭である。その場合は,国内での調査(生涯教育施設,ひきこもり者支援施設,障害者就労支援施設など)に替える。
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