研究課題/領域番号 |
19K02524
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
太田 美幸 一橋大学, 大学院社会学研究科, 教授 (20452542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | スウェーデン / ジェンダー / 発達文化 |
研究実績の概要 |
本研究は、スウェーデンにおける女性運動が、人々の意識や行動特性の変化にいかに関与し、女性の社会参加にいかに寄与してきたのかを解明することを目指すものである。1950年代まで、同国においても女性は主婦とパートタイム労働者の二重の役割を担うという考えが支配的であったが、1960年代の制度改革を経てジェンダー秩序が劇的に変化した。先行研究ではその要因として、女性運動の組織率とその社会的影響力の大きさが指摘されてきた。この点をふまえて、本研究の目的は、スウェーデンの女性運動がいかにして強い影響力を持ちえたのか、ジェンダー秩序の転換に向けての人々の意識の変様化はいかに進行していたのかを解明することにある。 2021年度は、民間団体が約30年かけて収集した女性労働者によるライフヒストリー集の解読作業を継続的に実施した。並行して、「女性運動」と目されてきた諸運動を類型化し、各運動体の成立背景と活動の特徴、運動体間の関係のありようなどを整理する作業をおこなった。20世紀初頭より顕在化した産業構造の変容とそこでの女性労働者の位置づけ、1930年代から1950年にかけての専業主婦の急増と1960年代におけるその急減の過程などを整理するなかで、良妻賢母イデオロギーの質的変容と、それに伴う家事改革の様相を、ジェンダー秩序の変容を導いた要因の一つとして把握するに至った。また、専業主婦の急増・急減といった現象の背景には、1930年代の失業率の上昇とそれを受けた労働運動内でのジェンダー秩序の強化、ノンフォーマルな成人教育機関における職業教育コースの増加、そこへの女性の参加といった一連の動向があったわけだが、日瑞の比較歴史分析を通じて、職業教育がノンフォーマルな機関で提供されたことが女性の意識変容において重要な意味をもっていたことも確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度前半までは、本研究を基課題とする国際共同研究強化(A)にかかる調査を優先しておこなっていたが、5月末に帰国してからは入手済みの資料の分析に集中的に取り組み、成果発表の準備作業を進めることができた。ただし、COVID-19感染拡大による移動の制約のため、現地滞在中に農村部で予定していた調査ができなかったことから、入手を目指していた資料の一部を断念せざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度から2023年度にかけて、本研究の成果を単著2冊により発表することを予定しており、すでに出版社とも打合せを重ねているところである。このうち1冊目は、入手済みの資料にもとづき執筆が進んでおり、2022年度中の早期に完成の見込みである。2冊目については、2022年夏季に予定している現地調査を済ませてから執筆に取りかかる予定であるが、スウェーデン国内においては各種制限がすでに撤廃され通常の調査が可能な状態となったものの、日本国内の状況が改善しておらず長期の海外出張ができない状態が続いているため、夏季の現地調査が実施できない可能性がある。その場合は、補助事業期間の1年延長を申請し、2023年度に調査を実施することを検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年9月から2021年5月末まで、国際共同研究強化(A)によりスウェーデンに長期滞在していたため、本研究の予算による旅費の支出の必要がなく、本研究に必要な文献の購入にかかる費用のみ本研究の予算から支出した。2022年度夏季に現地調査を実施する予定であり、残額はその際に使用する。
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