研究課題/領域番号 |
19K02527
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
岡田 菜穂子 (山本菜穂子) 山口大学, 教育・学生支援機構, 准教授 (90547142)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 障害学生支援 / 高等教育 / 支援体制 / 支援コーディネート |
研究実績の概要 |
本研究は、複数大学における、障害等のある学生の支援の申請や、授業中の 配慮実施の流れを比較分析するとともに、支援に関する情報を管理し連絡・調整を行って支援を采配する支援コーディネーターの働きに注目し、日々支援の現場でいかに支援が形作られているかを明らかにして、支援の一般化への提案を行う。 研究初年度(令和元年度)は、障害学生修学支援体制に関する資料整理・制度設計上のポイントの洗い出しを行うべく、①日本学生支援機構の実態調査結果等の整理、②複数大学の障害学生支援体制に関する資料整理、③支援体制構築のためのポイントの洗い出しを行った。 大学等では、障害学生修学支援のための委員会等の整備、関連規則の制定、支援担当者の配置等が進んでいる。これらの体制整備の必要性は、各高等教育機関の規模や校種、支援ニーズの多寡によって異なるが、共通して、支援を組み立てるための情報集約の仕組み、支援の合理性の判断・支援方針のオーソライズの仕組み、支援実施のための連絡調整の過程が重要であることを確認した。また、いくつかの大学の状況から、差別解消法の施行から数年を経て、支援環境の変化や、支援ニーズの増加・多様化が起こっており、支援現場では、これらにいかに効果的かつ効率的に応えられるのかがポイントになっていることが明らかになった。 引き続き複数大学の障害学生修学支援体制に関する資料収集を続けるとともに、支援申請の仕組みや授業中「配慮願」配布の流れを整理して、支援体制の比較分析につなげたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究初年度である本年度は、高等教育機関における障害学生修学支援の仕組みを比較分析するための資料収取と、担当者インタビューのための下調べを行った。 具体的には、日本学生支援機構の「障害のある学生の修学支援に関する実態調査分析報告」を参考に、日本の大学等における障害学生修学支援のための体制整備状況を整理するとともに、中国地方の国立大学を中心に大学のホームページ等から、障害学生支援に関するパンフレットや支援体制を紹介した資料、授業中「配慮願」サンプル等を収集し整理した。 また具体的な支援体制の事例として、障害学生支援の研究実施者が所属する山口大学の現状について、相談対応件数、支援申請者数、授業中「配慮願」送付者数、相談対応対象学生の障害区分別の推移などを改めて整理した。さらに、広島大学の障害学生修学支援状況について担当者にインタビューを行い、最近の支援の動向を確認することができた。これら個別の大学の事例は、今後の比較分析のための材料として活用する予定である。 なお、年度末に予定していた他大学への訪問と支援担当者へのインタビューは、新型コロナウィルス感染拡大防止の観点から、取りやめざるを得なかった。一部計画を実施できなかったことから、やや遅れをとっていると評価したが、次年度以降の研究計画を調整することで挽回可能であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究「高等教育機関における障害学生支援体制の比較分析」では、複数大学の支援体制の情報を収集して比較分析を行い、高等教育機関における障害学生支援の一般化のための提案を行うことを目的としている。研究初年度は、全国の高等教育機関における障害学生修学支援体制の整備状況の整理、複数大学の支援体制・支援の運用に関する資料収集と、他大学の支援担当者への聞き取り調査を行った。 初年度の研究成果を踏まえ、今後も引き続き資料収集に努めるとともに、複数大学における支援の申請や授業中配慮願の送付の流れ、支援コーディネートの実態と課題解決方法の解明を行い、支援体制の比較分析につなげたい。 研究2年目令和2年度は、令和元年度に収集した障害学生支援に関する情報をもとに、複数大学を訪問し、支援コーディネート業務の担当者へのインタビューを行うことを計画しているが、新型コロナウィルス感染拡大状況によっては、他大学の訪問を見合わせる可能性がある。そのため、オンライン会議システムや電話・メールを活用した聞き取り調査の実施を含め、一部実施計画の変更を検討している。なお、令和2年度に、他大学への訪問や、担当者へのインタビューの実施が難しい場合は、状況に応じて最終年度に調整することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画ではノートパソコンを購入予定であったが、タブレットの購入に切り替えたことで支出を抑えることができた。また、他大学を訪問するための調査旅費や研究発表のための旅費を調整していたが、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、やむなく他大学訪問を取りやめたり、登壇を予定していた学会がオンライン形式での開催となったため、旅費の使用に至らなかった。 余剰分は、翌年度の研究に活用予定である。新型コロナウイルスの終息時期によっては、使途を変更し、調査旅費としてではなく、他大学の障害学生修学支援担当者に遠隔で聞き取り調査を行うためのオンライン環境整備のための費用に充てる予定である。
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