研究課題/領域番号 |
19K02534
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研究機関 | 東北文化学園大学 |
研究代表者 |
山尾 貴則 東北文化学園大学, 現代社会学部, 教授 (80343028)
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研究分担者 |
村澤 和多里 札幌学院大学, 心理学部, 教授 (80383090)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 当事者研究 / 若者自立支援 / 承認 |
研究実績の概要 |
本年度は、昨年度まで継続してきた若者自立支援活動への参与観察を一旦休止し、当事者研究に関する研究にしぼって研究活動を実施した。 新型コロナウィルス感染症拡大下で長距離の移動に関する制約が続く中ではあったが、研究代表者の居住地の近隣に位置する地域で当事者研究を実施している団体において当事者研究に実際に参加し、参与観察を実施した。昨年度は当事者研究に7回参加し、本団体が実施している当事者研究の特徴をつかむことに注力した。 この作業を通して、本団体で実施されている当事者研究は、当事者「研究」であるとともに当事者「史」、すなわち当事者研究における発表者が自らの生活史を自分自身の言葉で形にするという側面も含むことが明らかとなった。当事者研究を編み出した浦河べてるの家における実践を見ても明らかなように、最大公約数的に言えば、当事者研究とは「今の困りごと、今の自分の病気」についてその困りごとや病気を各自が研究し、それに名前をつけていくという営みである。 それに対して、本団体における当事者研究においては、各回の発表者のテーマはさまざまであるものの、総じて「自分自身がこれまでどのような経験(主要には辛い、しんどい経験)をし、どのような人生を歩んできたかを当事者が思い出し、語り、それを司会者が書き出し、それらの経験がどのようなものであったのかを参加者の意見も得ながらあらためて理解していく」という作業が中心となっていた。この作業は必ずしも「今」の困りごと、病気の研究ということにはならないのかもしれないが、「自分で自分の過去を語れるようになるということ、自分の過去を参加者と共有できること」を通して、「今」に至る自分自身について理解を深めるという意味で、一般的な当事者研究の前段をなす営みとして、当事者研究とはまた別個にその意味、意義を検討する必要があると考えられる。この点は次年度の課題としたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルス感染症拡大の状況下で移動に関する制約があり、全国各地における当事者研究実践について参与観察をすることができなかったことが主要な理由である。ただし、研究代表者の居住地近隣において当事者研究を実践している団体については参与観察を継続することができている。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウィルス感染症に関しては、社会全体として、十分に注意をしながらも社会活動を徐々に再開させていく方向に動きつつある。本研究においてもこのことを踏まえ、これまで実施することができなかった全国各地の当事者研究実践の調査、とりわけ浦河べてるの家の活動の現地調査を実施し、当事者研究に関する知見をさらに収集する。 それとともに現在継続中の当事者研究活動の参与観察も継続し、その特質についてさらに検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルス感染症拡大の状況下で、長距離の移動に関する制約があり、全国各地で当事者研究を実践する団体、組織への訪問、調査、見学ができなかったことによる。 次年度は新型コロナウィルス感染症に関する対応も変化することが予想され、これまで実施できなかった各地の当事者研究を実践する団体、組織の現地調査を実施する。とりわけ浦河べてるの家の実践については確実に現地調査を実施したい。
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