研究課題/領域番号 |
19K02535
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
小針 誠 青山学院大学, 教育人間科学部, 教授 (90388067)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 国立・私立小学校 / 家族の教育戦略 / 社会階層 / 学校経営 / 多様性 / 教育改革 |
研究実績の概要 |
2020年度は、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、当初の調査計画の大きな変更を余儀なくされた。研究環境・条件が大きく制約されたなか、以下の研究に取り組んだ。 第一に、これまで蒐集してきた史資料を中心に、本研究課題の基礎研究を継続した。2019年度は、この20年間における国立・私立・公立別の小学校数や児童数などを文部科学省『学校基本調査報告書』所収のデータから明らかにし、その全国的な傾向を捉えたが、2020年度は調査研究の主たる対象地域である首都圏ならびに関西圏に限定し、その変化を捉えた。東京都心部では、人口の一極集中を象徴するように、小学校児童数の増加とともに、学級数が増加傾向にあることを示した。さらに設置母体や教育理念も多様化し、国立・私立小学校のみならず初等教育全体にも波及していることが明らかにされた。 第二に、当初計画では2020年4月から7月の実施を予定していた質問紙調査が新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、無期延期とせざるを得なくなった。2020年度はあらためて調査計画の練り直しと調査票の見直しを行った。なお、本調査は2021年4月から7月に実施することが決定し、分析結果を学会大会などで発表し、論文や著書としてまとめていく予定である。 第三に、本研究課題に関連して、現代の教育改革について批判的に検討した。一連の大学入試改革に関する批判的検討を行い、中村高康編『大学入試がわかる本』岩波書店に「学習指導要領と大学入試改革」と題する章を分担執筆した。また、コロナ禍による学校の一斉休暇中に、秋期入学(いわゆる9月入学制)が突如社会的耳目を集めることになった折には、時期を変更した場合の制度的な問題や課題を歴史的・社会学的に論じ、その談話が「耕論 突然の9月入学騒動 『全員同じ学び』こそ問題」として朝日新聞に掲載された(2020年5月30日全国版・朝刊)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当初計画では、2020年4月から7月にかけて、質問紙調査「国立・私立小学校の入学志向に関する実態調査」を実施する予定であった。ところが、新型コロナウィルスの感染拡大と政府による緊急事態宣言の発出などにより、調査の実施が困難になり、しばらくの間、「無期延期」とせざるを得なくなった。その後2020年度中も、調査の時機を探ってきたものの、対象者側の実施受入が困難であることが判明したため、年度内の調査の実施そのものを断念せざるをなかった。しかし、2021年4月より、同調査の実施が決定するなど、再開の目処が立っている。今後、同調査の実施、分析、発表を通して、コロナ禍によるこの約1年間の研究活動の停滞を早急に挽回しなければならないと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度に計画していた調査研究を2021年度に行うことにある。それは当初予定・計画していた質問紙調査を実施し、定量的な分析を行い、それを学会大会等において報告、論文などにまとめていくことである。本調査研究課題で特に重視しているのは、2000(平成12)年に実施した同調査との比較を通して、この20年間で、学校教育(特に幼児教育・初等教育)のあり方、教育改革・制度、家庭(親の教育意識や社会階層など)がどのように変わったのか、変わらないのかに注目しながら、分析することにある。また、2020年度における図書館や学校等の資料閲覧制限に伴い、十分に蒐集・分析できなかった史資料の再分析や考察を同時に進めていく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度は、質問紙調査の実施とその分析結果の発表を目的として、調査票の印刷代、郵送費、調査票の整理やデータ入力などに対する謝金、学会報告のための出張旅費など、他の年度と比較して、多額の予算と使用を見込んでいた。ところが、新型コロナウィルスの感染拡大に伴い、当初予定していた調査計画は中断または変更を余儀なくされた。また、出席を予定していた学会大会もまた相次いで中止ないしはオンライン開催になったことなどから、大会の開催地への旅費等の支出もなくなった。さらには、公文書館や図書館あるいは学校等に赴いて史資料の渉猟とその分析を計画していたが、これも地理的な移動と資料等の閲覧制限のため、十分な実施が困難になった。他方、既存または一般公開されている史資料の再分析を進める機会が増えたことから、市販の研究資料やパソコン・周辺機器などの物品購入が予定以上にあった。以上より、次年度に相当額の使用繰越額が発生することとなったが、これは2020年度に予定していた研究計画の中断によるものであり、2021年度は、2020年度内に実施困難となった研究計画の遂行を最優先に、適切な支出とともに、研究活動を進めていく。
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