研究課題/領域番号 |
19K02537
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
武石 典史 電気通信大学, 情報理工学域, 教授 (00613655)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 近代化 / 試験 / 業績主義 |
研究実績の概要 |
非西洋の近代化後発国を対象に、文民エリート、具体的には文官官僚の地位性・階層性と「学歴・成績」との対応性を各種史料、および日本国内外の文献に基づいて検討を進めた。 まず、「エリート」を個票化したデータベースや先行諸研究をもとに、文官官僚の「学歴・試験成績」と「重要ポストの歴任等」との相関性を分析し、業績主義の度合いの違いを明示した。このデータベースからは出身学校や留学経験、留学先の動向を浮き彫りにすることができた。ある時期を境に、試験成績の重要性が変わり、留学からの帰国組の位置づけに変化が生じていたことを指摘した。 上記の分析から得られた知見を、回想録、自伝、聞き取り資料、新聞・雑誌記事をもとに質的な面から裏付けるべく慎重に照合した。この作業を経て、上記の知見の説得性を高めることができた。具体的には、試験採用集団、留学帰国組集団といった教育的背景をベースとした集団が文官・武官横断的に形成されたエリアが少なくなかったという点である。こうした特徴を示すエリアは、どちらかといえば、近代化の離陸に時間を要した国であった。これは教育の「国産化」を達成することに難しさがあったことを示唆している。 上記作業の成果を反映させながら、業績主義のありかたが、文官官僚の自己意識や軍事エリート観の形成に与えた影響について考察を深めた。「業績主義の度合いとエリート間葛藤の関係性」についてさらに掘り下げて検討することが次年度の課題の一つである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は資料館の利用制限や海外渡航の難しさもあり、予定していた資料調査を十分に行うことができなかった。 しかし、当初の予定よりはやや遅れたが、年度内に学術雑誌に投稿することはできた。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、制限された状況のもとではなにかしらの不都合や不便は避けられない。しかし、そうした「環境」でこそ進めることができる調査や分析という可能性を広げることができた。その方向性で、学問水準を落とすことなく、研究を推進していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
世界的なコロナウィルスの蔓延により、予定していた海外調査を実施できなかった。この状況が次年度において劇的に改善されることは考えにくいので、海外資料館等の諸サービスに対し積極的に支出し、研究を進めていく。
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