研究課題/領域番号 |
19K02537
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
武石 典史 電気通信大学, 情報理工学域, 教授 (00613655)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 官僚 / 将校 / 試験 |
研究実績の概要 |
令和3年度は、これまでの知見を整理しつつ、日本およびタイにおける主要アクターの「業績的特徴」を分析し葛藤の背景を検討した。そのうえで「エリート間の関係性」の理論化の足掛かりを得た。 (1)後発諸国は「軍事・文民エリートともに業績主義」、「軍事は業績主義徹底、文民は不徹底」、「軍事は不徹底、文民は徹底」、「軍事・文民ともに不徹底」などの類型のいずれか分類できる。日本は「軍事・文民エリートともに業績主義」、タイは「軍事は業績主義徹底、文民は不徹底」であることが示唆された。 (2)タイの将校の履歴を個票化し、その社会的背景を解明した。将校は近代化の初期段階から厳しい試験・選抜を課せられており、試験成績が配属先などを左右した。陸軍将校も当初は上層階級が選抜や昇進において優遇されたが、学校体系の構築とともにメリット・システム化が進行し、学歴主義・成績主義的傾向が強まっていった。この傾向によって陸軍将校は次のように特徴づけられることになった。 第一は、他の集団に対し優越感と自信を抱くようになった。第二は、凝集性である。陸士卒業という学歴が重視されるようになったことで、将校団が同校卒業生を中心とする集団となり、かつ同校や幹部養成学校での成績優秀者がその中核となった。 (3)タイにおける官僚の任用はコネなどによるところが大きく、試験制度もなかなか定着しなかった。官僚養成機関もいくつかはあり、そのうちの一つが発展しチュラロンコン大学が設立されたのは1917年になってからだった。 上記の諸分析から、将校の自負と凝集性の高さが、官僚に対する陸軍の上位性という構造の形成の一要因になったとの仮説的結論を導き出したうえで、日本およびラテンアメリカとの比較分析の重要性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の拡大に伴い、資料館や公文書館が閉鎖されるなど、その利用が長期にわたって困難になった。出張の自粛が求められた。そのため、十分な資料調査が遂行できたとはいえず、研究期間を一年延長することになった。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き資料の収集や整理を進めながら、日本との比較にたえうるようなエリアの分析を進めていく。海外の研究者が参照できるよう、英文での成果公表を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により調査が予定通り実施できなかったため。
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