本年度の研究実施計画に基づき、昨年度に実施した2つの調査について分析を進め、学会報告、論文の執筆、および、研究成果全体をふまえた書籍の刊行準備を進めた。 本年度の具体的な成果は以下の通りである。1)ネットワークの多様な機能が、紐帯種別によって使い分けられていることを明らかにし、家族社会学会にて報告した。2)子育てに関する2つの価値志向(共生志向・競争的達成志向)が、ネットワークの多様な機能と関連していることを明らかにし、教育社会学会にて報告するとともに、その内容を紀要論文にまとめた。3)これまでの研究成果の全体的な関連について、多重対応分析を用いて明らかにした(書籍の1章として収録)。 研究期間全体を通じた本研究の成果の1つは、子育てネットワークに関する従来の研究が、「育児期」の「母親」を対象とした、「ネットワークの支援機能」の解明に偏っていた中にあって、これら3つの限界を乗り越えた点にある。すなわち、1)パーソナルネットワークの影響に関する理論的・経験的研究のレビューに基づき、子育て「ネットワークの多様な機能」を抽出した。2)研究対象を、「ポスト育児期」の「父親」にも拡大し、「ネットワークの多様な機能」がもたらす効果を検討する初めての調査を実施した。 以上の研究枠組みに基づいて、育児不安・養育態度・子育てに対する価値志向等に対するネットワークの多様な機能がもたらす影響について分析を行うとともに、全体の関連構造を多重対応分析によって明らかにし、ポスト育児期における子育てネットワークの状態が、「孤立」「競争」「共生」という3つのキーワードによってとらえられることを明らかにした。また、それらをふまえて、より望ましい社会に向けた提言を行った。以上の内容を書籍にまとめた。
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