研究課題/領域番号 |
19K02542
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
横田 雅弘 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (90200899)
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研究分担者 |
佐藤 郡衛 明治大学, 国際日本学部, 特任教授 (20205909)
山脇 啓造 明治大学, 国際日本学部, 専任教授 (30230600)
岸 磨貴子 明治大学, 国際日本学部, 専任准教授 (80581686)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ダイバーシティ / まちづくり / 中野区 / 現場生成型研究 |
研究実績の概要 |
2020年度にはコロナ禍が深刻になって、実際に動くことを通して実現させていく現場生成型研究を進めることは難しかったが、かわりにオンラインでの活動を展開し、10月には第1回中野ダイバーシティ・デイを開催し、「酒井区長が語るダイバーシティ」、「誰も取り残さない防災と中野」「やさしい日本語と中野」などの講演と中野アールブリュットディレクターと貧困家庭の映像による子ども支援CAMEL代表と研究メンバーによるパネルトークを実施した。その後も、電通ダイバーシティ・ラボの斉藤徹氏によるジェネレーションに関する勉強会、ピープルデザイン研究所の田中真宏代表による勉強会を開催し、さらに中野オーラルヒストリークラブ代表、「中野人図鑑」を放映するJCOM中野ディレクター、まちライブラリー代表、中野観光協会理事長、そして人権条例の先駆的事例として国立市長と秘書室長などにオンライン・インタビューを行った。 また、理論的な背景を整理するとともに、先駆的な実践資料を収集した。大きく分けると、まちづくりやソーシャル/コミュニティ・デザインに関する文献、ナラティヴとオープンダイアローグに関する文献、偏見と差別に関する文献、活動理論や学習理論に関する文献を収集し、現在論文としてまとめている。 科研のテーマによる研究発表としては、6月の第41回異文化間教育学会大会でオンラインによるメンバーの共同発表を行い、9月の日本ヘルスケアダイバーシティ学会の大会でシンポジウムに登壇した。 中野区の多様性推進をめざした条例に関しては、制定のための審議会が、第1回の書面会議に続き、3月に第2回が開催されている。副会長として本科研の代表が参加し、知見を提供している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本構想は、2019年6月の異文化間教育学会第40回大会公開シンポジウムで中野区長を交えて発表され、スタートした。続けて、中野区の多様なマイノリティ団体や個人、ダイバーシティ推進を積極的に進めている企業やNPOなどのキーパーソンを発掘し、約50名の参加者を集めた第1回ラウンドテーブルが同年11月に開催され、活動の土台となる中野ダイバーシティ・プラットフォーム(NDP)が立ち上がり、ホームページ等も開設された。2019年度には、産学連携科目「ダイバーシティ都市中野をつくる」も開講され、先駆的な活動を展開する大阪市、尼崎市、世田谷区、渋谷区、三重県、アムステルダム、ロッテルダム、ストックホルムなどでインタビュー調査が実施された。2010年10月には、オンラインで中野ダイバーシティ・デイを開催するなど、NDP主催のイベントも実施している。また、2019年度後半には、中野区のダイバーシティ推進の展開をウォッチする仕組みとしての「中野ダイバーシティ曼荼羅」のウェブデザインの基本設計が完成した。 しかし2020年度は、コロナ禍のため、中野区のステークホルダー訪問や、相互の関係づくりに奔走することはできなかった。かわりに、オンライン・インタビューやセミナーを実施し、本活動の理論的な背景を確認するための文献調査が進められ、その成果は論文が準備されるとともに、2021年1月から始まった上述の中野区の条例制定のための審議会に研究代表が参加することを通して提供されている。 コロナ禍で実施できなかったことは、中野区の更に多くのステークホルダーを実際に集めて開催する対面の第2回のラウンドテーブルと、中野にぎわいフェスタと連携した中野ダイバーシティ・デイの開催、中野ダイバーシティ曼荼羅の運営体制の構築である。中野区の条例の制定はおそらく2021年度末となるが、これが進めば更なる進展が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの終息まで、最短でも今年度いっぱいはかかると予想されるため、NDPラウンドテーブルの対面での開催や、そこに参加する中野区のダイバーシティ関係団体・組織が結集する機会として期待される中野にぎわいフェスタも対面での開催は難しいと考えられる。従って、2021年度もオンラインによるダイバーシティ・デイの開催や、オンライン・インタビュー、オンライン勉強会等を続けて、新しい参加者を増やしていく。また、メンバー4人の担当する授業もNDPに関連するテーマ設定を行い、授業連携の形でも進めるほか、中野区主催の生涯学習大学の講座である「地域共生ゼミーダイバーシティのまちづくり」をメンバー4人が担当し、ゼミ学生も含めて中野区のダイバーシティに焦点を当てた講義を提供する予定である。中野区をフィールドと定めており、今年度末には中野区の関連条例が制定されると思われる。中野区と連携して、本研究の結果を活かした条例の制定とそれにもとづく実践を推進していく。中野区のダイバーシティ状況をウォッチし、評価する仕組みとしての「ダイバーシティ曼荼羅」は、中野区の参加が望ましいが、条例による影響も受けるため、現在は保留状態にある。しかし、運用開始が決まったときにはすぐに実行に移せるよう準備していく。 文献研究について焦点を当てた論文がほぼ完成しており、投稿準備中である。すでに刊行されたものとしては、「多文化共生のまちづくり~中野区でのゼミ活動を通じた学生による地域実践を中心として~」(山脇啓造・山脇ゼミ『平和創造学への道案内』山田朗・師井勇一編 法律文化社、pp143-154、2021.5.)があるが、現在明石書店と本科研成果の著作物の構想を練っており、出版は科研終了後となる可能性が高いが、出版の決定まではこの期間に決定する予定である。これらの内容については、学会等でも発表する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度はコロナ禍で対面での調査や会合が開けなかったため、対面でのまちづくりの活動はほとんど停止してしまった。特に、研究者と既知のマイノリティ団体やダイバーシティ推進団体との一対一の会合は、ある程度はオンラインで可能であったが、新規の団体の発掘や他の団体同士のつながりをつくる仕組みはやはりオンラインでは難しく、これらの活動はコロナの収束を待つことになった。具体的には、キーパーソンを集めるラウンドテーブルや中野にぎわいフェスタとの連携など、2020年度は中止になったことなどがあげられる。2021年度にこれらの活動が再開できるかどうかはコロナの状況によるが、準備は進めておく。また、先駆的事例(地域)の訪問も2020年度は全て不可となっていたため、コロナの収束にともなって必要な訪問を行う予定である。
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