研究課題/領域番号 |
19K02547
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研究機関 | 京都ノートルダム女子大学 |
研究代表者 |
石川 裕之 京都ノートルダム女子大学, 国際言語文化学部, 教授 (30512016)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 才能教育 / 教員養成 / 教員の資質能力開発 / 韓国 |
研究実績の概要 |
本研究の5年目となる令和5年度は、前年度に実施した韓国における現地調査の成果を分析・整理することに重点を置いて研究活動を進めた。その結果、以下のことが明らかになった。韓国における公的な才能教育機関の教育対象者数は近年減少を続けていた。その要因としては、第1に母集団となる児童生徒数自体が少子化の急速な進行によって減少していること、第2に2010年代はじめ以降高校無償化等の政策に押されて才能教育政策が退潮局面に入り予算が削減されていることが考えられた。特に才能教育体制の裾野を支える英才学級の対象者減少のペースは他の才能教育機関と比べて突出しており、地方自治体における才能教育関連予算削減において英才学級が主なターゲットとなったことを反映していた。ここから、韓国の才能教育体制の量的縮小は才能教育体制の裾野の縮小によるエリート主義的色彩の強化というかたちで進行していることが明らかになった。さらに、小学校教員養成課程を開設している大学の教育大学院を対象に、才能教育関連専攻の設置状況や教育の目的・内容等について検討したところ、教育大学院の多くに才能教育関連専攻が設置されていることが確認できた。公的機関が提供する職務研修の機会とは別に、才能教育担当教員の資質能力・専門性向上のための大学院レベルの教育の機会が提供されていることは、才能教育の質保証にとって重要なことであると考えられた。一方で、才能教育関連専攻の分野は数学・科学教育関連分野に大きく偏っており、開設科目も教科教育を中心とする構成となっていることが分かった。才能教育関連専攻に所属する教員についても教科や教科教育を専門としており、才能教育に関する専門性が低い可能性が示唆された。なお、本研究課題の成果を盛り込んだ図書(共著)を『現代韓国の教育を知る』(明石書店、2024年)として公刊した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍による一昨年度までの進捗の遅れが影響しているため。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査によって、政府系シンクタンクや地方教育行政当局が実施する研修の内容等について把握し、才能教育担当教員の資質能力開発体制のうち公的機関が担っている役割の実態を明らかにする。その上で、これまでの研究活動を通じて明らかになったことを総合的に検討し、本研究課題の総まとめをおこなうとともに、研究成果を公表する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍により一昨年度まで現地調査や対面での学会発表ができず、計画通り旅費を執行できなかったことが引き続き影響している。次年度において現地調査や学会での研究成果発表を積極的に実施することで、できるだけ当初の計画に沿ったかたちで使用する。
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