今年度は、本研究課題の対象であるドイツへの渡航が可能になったことをうけて、12月に調査のための出張を実施した。調査訪問のアポイントをフリーに得ることはまだ困難であったため、訪問先については継続的に研究協力をすすめているドイツ・ドレスデン工科大学の教員養成センター長、アクセル・ゲールマン教授に調整を依頼した。調整をいただいた結果、以下の機関において聞き取り調査を行い、本研究課題に関わる具体的な知見を得た。 (1)ドレスデン工科大学・教員養成センター このセンターでは大学全体の教員養成コースの全体を管理するとともに現職教員をフルタイムの研究員として2年間程度の期間で受け入れている。この研究員は基本的に論文を執筆して博士号を取得した後に学校現場へ戻る。このシステムは広い意味で教員の職能成長の機会とみなせることがわかった。 (2)ザクセン州文部省 教員養成及び研修担当部局において、教員養成と研修の関係について日本とドイツの構造の違いについて議論した。全体として、入職後の教員研修は低調であることが確認された。逆に、日本の教員養成教育の「薄さ」が強く印象付けられた。 (3)ザクセン州教員組合本部 教員の労働条件の向上について一手に教育行政との交渉を担っているのがザクセン州教員組合である。近年の成果としては、公立学校教員の「官吏 Beamte」としての任用権を確立することに成功した。官吏化によって給与及び社会保障面では待遇の向上が期待されるが、官吏はストライキ権を持たない。なお官吏ではない公務員は公務労働者 Angestellte である。 労働条件の保障をしながら職能の成長を図る行財政上の工夫を明らかにするという観点から、さらに具体的な情報の収集を進める必要がある。
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