研究課題
基盤研究(C)
本研究は大正・昭和初期中等学校の学校紛擾の実態を明らかにし、その背景にある教育関係と教育文化の特徴について検討した。新聞の紛擾記事の分析からは、既存の研究で指摘があった明治期後半とともに、大正後期にも紛擾件数にピークのあることが分かった。また、紛擾の事例研究からは、新・旧の学校文化と生徒文化の齟齬が紛擾を惹起したこと、近代学校の基層で維持され続けた人格的な教育関係が紛擾の背景にあったことなどを明らかにした。
教育社会学
従来、中等学校の紛擾史研究では対象が明治期に偏っていたが、本研究は大正・昭和初期に焦点づけて、紛擾の件数を実証的に示し、事例から紛擾の実態を詳細に明らかにできた。また、既存の研究が第三者の資料を主に用いてきた一方で、本研究は当事者である生徒・教師の主観的意味世界に着目し、紛擾時の行為や動機づけに迫ることで、新たな紛擾像を提示できた。以上により、教師・生徒関係が揺らぐ現代において、教育関係の課題を相対化しうる視座を提供できたと考える。