研究課題/領域番号 |
19K02562
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
青木 利夫 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (40304365)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | メキシコ / 子ども / 貧困 / 児童労働 / 路上生活 |
研究実績の概要 |
本年度は、新型コロナウイルス感染症拡大により海外渡航が不可能となったため、当初計画していたメキシコの関係機関(国立図書館、定期刊行物保存館、メキシコ市歴史文書館など)における2回の資料調査および収集は実施することができなかった。そこで、インターネットを通じて、19世紀末から20世紀にかけてメキシコ・シティの路上で働く子どもに関する先行研究や、国立人類学歴史学研究所の写真館に保存されている写真などの文献・資料を調査収集する作業をおこなった。 資料調査と平行して、これまで入手した文献・資料にもとづき、貧困家庭の子どもや保護者のいない子ども、非行行為のあった子どもなどを保護・監督する政策や施設などの制度に関する先行研究を再度見直すとともに、路上で働く子どものなかでもとくに新聞売りの子どもと、それを取り巻く社会環境(新聞社や新聞販売員組合、近隣住民などとの関係)を検討する作業を継続した。また、当時、路上における子どもの労働のなかでも、新聞販売とともに多かった靴磨きにも焦点をあてて、靴磨きに従事する子どもの生活実態を明らかにしようと試みた。しかしながら、新聞売りの子どもに比べ靴磨きをする子どもに関する先行研究や史料は少なく、インターネットで入手できる文献・資料は限られていた。とはいえ、先行研究のほか、当時の写真や昨年度入手したメキシコ・シティ歴史文書館所蔵の一次史料の分析を通じて、靴磨きの子どもたちには許可証が与えられていたこと、子どもたちが靴磨きに必要な道具を購入していたことなどが明らかとなり、路上で靴磨きに従事する子どもたちに対して管理統制などの組織的な働きかけがあることがわかった。今後も、貧困のなか生きる子どもたちが、どのような社会環境のなかで物売りや靴磨きなどの労働をしながら生活をしていたのかについて、引き続き調査分析することとした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本年度は、「研究実績の概要」の欄に記載した通り、メキシコの関係機関において2回の実施を予定していた資料調査および収集ができなかったため、インターネットによる先行研究や資料の調査収集に限定された。本研究に関連する一次史料については、当時の写真など一部を除き日本での入手は極めて困難であり、インターネットで入手できる資料は先行研究などに限られている。そのため、必要な史料が収集できなかったことから、2020年度に投稿を予定していた学術論文の執筆を断念せざるを得なかった。さらに、所属する学会において口頭発表を予定していたが、学会が中止となったため発表もとりやめとなった。以上の理由から、本年度は研究計画の通りに進めることは難しく、研究は遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度も新型コロナウイルスの影響が続くことが予想され、また、研究対象であるメキシコは感染者数が多く、収束の見通しは立っていない。海外渡航の制限が続き、また研究機関の多くが閉鎖されていることから、2021年度の資料調査も実施できない可能性もある。そこで、これまで収集した先行研究および資料を再度点検し、入手した資料からどのようなことが明らかにできるか、改めて検討する。また、インターネットによる資料調査を継続する。具体的には、これまで焦点をあてて検討してきた新聞売りの子どもに加え、路上で靴磨きや物売りをしながら生きる子どもたちとその家族に焦点を当てる予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症拡大のため、当初予定していた海外での資料調査ができなかったこと、口頭発表を予定していた学会が中止となったことから、国内外の旅費を支出しなかったことにより次年度使用額が生じた。次年度に、国内外での移動が可能になった段階で旅費および資料の収集に使用する予定である。
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