研究課題/領域番号 |
19K02563
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
尾川 満宏 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (30723366)
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研究分担者 |
尾場 友和 大阪商業大学, 公共学部, 講師 (50781374)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 工業系女子 / 建設業 / 製造業 / 工業高校 / ジェンダー / 職業選択 / キャリア形成 / 女性活躍推進 |
研究実績の概要 |
2020年度は、工業分野における女性の働き方に関する政策動向と業界動向・施策を概観し、まとめるとともに、パイロット調査で実施したインタビュー調査の分析から論点を抽出することを試みた。 女性活躍推進政策一般では担当大臣の設置や関係法令の整備が2010年代に勧められ、大企業を中心に、女性の積極的な採用・雇用・登用や、働き方改革の推進、職場風土の改善などが法的に求められ、情報公開や改善方策の提出なども義務づけられた。そうした法制度と同時並行的に、建設業・製造業などの各業界が独自に女性の積極的な活用や活躍を推進するための取組を進めてきた。そうした変化は高校就職指導の現場にも見て取れる。 加えて、メディアにおける「工業系女子」の描かれ方についても、限定的な検討を行った。近年では大手飲料メーカーや大手ゼネコンのテレビコマーシャルなどで、建設現場で活躍する女性が描かれている。そうした女性たちに焦点を当てた写真集やマンガでは、「土木女子(ドボジョ)」「成形女子」や「電工女子」など具体的な職種や業種と結びつけられた女性たちが、しかし「男勝り」というよりむしろ「フェミニン」に描かれ、表象されていることが示唆された。SNSの検討などから、おそらく、この10年のうちに工業系女子は日本社会のなかで概念的に誕生し、労働政策や労働市場で注目されるようになったと考えられる。 他方、工業系女子たち自身の経験に関するインタビュー調査も開始した。パイロット調査によれば、工業高校での学習や生活の経験は、在籍する一部の女子生徒にとって、教育とジェンダー、職種とジェンダーの関係性や規範を学び、再生産していく場となっていた可能性であった。工業教育カリキュラムを学び、建設・製造の分野で活躍する女性層が徐々に拡大しているのは確かだが、調査を継続し、彼女らの経験やキャリアの多様性を丁寧に把握していく必要があろう。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
政策動向などについては一定の調査ができ、初年度の目的は一定程度達成できた。また、調査については計画よりもやや多く実施できた点から、順調に進展しているといえる。 ただし、文献研究による理論的考察の進捗がやや遅れている。2020年度に進展させたい。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は新型コロナウィリス感染拡大防止の対応を受け、調査をふくめた研究進展が全体的に遅れることが予想される。当初の計画を微修正し、2020年度は文献研究を中心に進め、年度後半に調査を再開できるよう準備する。
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次年度使用額が生じた理由 |
ノートパソコンが想定より安価に購入できたこと、また報告を行った国際学会をアジア地域での学会に変更したことなどにより、予算上の余りが生じた。これを次年度使用額として、調査等の拡充に活用する。
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