研究実績の概要 |
2022年度までに実施した調査結果の一部をまとめた。具体的には、工業系カリキュラムを学ぶ生徒・学生に対する調査結果を分析し、工業系女子の学校・学科選択の経験を明らかにした成果を中国四国教育学会第74回大会で報告した(工業系女子のキャリア形成, 尾川満宏, 尾場友和, 中国四国教育学会第74回大会, 2022年12月04日、香川大学)。 分析の結果、工業系カリキュラムに進学した女子生徒・女子学生たちは、さまざまな経緯・理由から学校選択、学科選択を行っていたが、周囲(とくに親や友人)から工業系学校・学科に進学することを驚かれるなど、ジェンダー的視線にさらされつつも、比較的明確な職業希望を有してそれらの学校・学科を選択していることが明らかになった。と同時に、明確な職業希望や進学理由を語らねばならないこと、あるいは彼女たちがそうした語り方を獲得する過程は、依然として強固なジェンダー的磁場が存在していることを示唆しているものと考えられる。今後精緻に検証していく(尾川満宏・尾場友和、2023,「工業系女子のキャリア形成―学校学科選択の経験に着目して―」『教育学研究紀要(CD-ROM版)』68巻, pp. 354-359)。 加えて、欧米の労働者階級の若者たちに関する研究においては、労働者階級の女性の進路や生活、サブカルチャーなども検討されてきたが、日本においてはノンエリート女性の進路選択や職業選択、サブカルチャーに関する研究蓄積が乏しい点も指摘した(Mitsuhiro Ogawa et al., 2023, "From the reproduction of social class to the production of locality: Focusing on the narratives of young working class men in rural Japan, International Journal of Educational Research," International Journal of Educational Research, vol. 118: 1-2)。
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