研究課題/領域番号 |
19K02568
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
澤田 稔 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (00367690)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 準市場 / 社会的公正(social justice) / 批判的教育学 / カリキュラム / 教育方法 / インクルージョン / コンピテンシー / デモクラシー |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「準市場(quasi-market)」及び「社会的に公正な教育(Education for Social Justice)」を鍵概念として、学校教育において社会的公正(社会正義)とは何を意味するのか、それは準市場を介した政策によって実現可能なのか、可能だとすればどのようにしてなのか、またたとえ可能だとしてもそこにはどんな課題が生じるのかという諸点に関する理論的研究、及び準市場を介した公教育政策・実践の中でより社会的公正に資すると考えられる政策・実践に関する、また社会的に公正であると呼ぶに値するカリキュラム・教育方法及び学校運営に関する事例研究に取り組むことにある。 今年度は、主として、このうち(1)「社会的に公正な教育」に関する理論的側面に関する論点整理、(2)こうした教育のカリキュラム・教育方法及び学校運営に関する事例研究としてボストンの公立校で幼少中一貫校であるMission Hill School(MHS)での実地調査、(3)同校をめぐるボストン市における「準市場」的教育政策と学校評価の関係に関する実地調査、およびイギリスのデモクラティック・スクールの実地調査を予定していたが、(1)については国際学会、および国内学会での発表で扱い、(2)については一部を実施したものの、SARS-CoV-2感染拡大問題により(2)の一部、および(3)に関しては中止せざるを得なかった。 (1)は、社会的に公正な教育の3要素を、N. フレイザーの正義論における「承認の政治・再配分の政治・代表の政治」を下敷きに、インクルージョン(包摂性)・コンピテンシー(汎用的能力/批判的思考力)・デモクラシー(民主主義)に整理した。(2)については、MHSで年度開始前の8月末に開催された宿泊研修の参与観察を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
理論的研究に関しては、予定していた進捗を達成できている状況にあるが、実践事例に関する研究は、SARS-CoV-2感染拡大問題により海外出張が不可能となり、予定していた実地調査を遂行できなかったため、無視できない遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
今後しばらく海外への出張が困難な時期が続く可能性が高いので、実地調査を本科研最終年度に実施せざるを得なくなる可能性があり、それも不可能な場合には、メール等による当事者への問い合わせ、webで検索できる資料に限定した調査等に切り替える必要が生じる可能性がある。国内における学校調査は、可能な範囲で実施し、学会発表につなげていきたい。 こうした状況の中で研究上と最も大きな困難となるのは、本研究の研究課題を構成する最も重要なキーワードの1つ「準市場」的教育政策の学校現場への影響に関する事例分析のためのデータ収集である。これらに関しては、もしかすると、この科研研究の最終年度にやっと本格的に可能になるということもあり得るので、理論的な水準の研究の方に重点を置いて作業を進めることも視野に入れる必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
SARS-CoV-2感染拡大問題により、海外実地調査を中止せざるを得なかったため大幅な残額が生じた。次年度、この状況が落ち着いたら調査を実施したいと考えているが、それが困難な場合には科研最終年での駆け込みで実施せざるを得ない可能性がある。
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