研究課題/領域番号 |
19K02568
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
澤田 稔 上智大学, 総合人間科学部, 教授 (00367690)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 準市場 / 社会的公正 / 批判的教育学 / ウェルビーイング / コンピテンシー / デモクラシー / インクルージョン / 緩さ |
研究実績の概要 |
パンデミック以降、この科研研究の主軸をなす活動となるはずであったアメリカ合衆国ボストンでの実地調査に出向くことが非常に困難になり研究計画に大きな狂いが生じ、その研究の遅れを感染状況の改善後に取り戻すことを期していたものの期待したほどの改善は見られず、研究機関の延長を申請した昨年度の研究活動は、主として、それまでの実地調査で得られた質的データに基づく研究成果の報告と文献研究による知見の再整理にとどまった。 しかし、こうした困難に直面しながらも、本研究申請時に明示した課題に照らして、「社会的に公正な教育」の諸相を、批判的教育学やカリキュラム・教育方法論に即して明確化する作業を進め、学会等における口頭発表や各種媒体における論考の出版を通じて公けにすることができた。 そこで扱った論点には次のような諸点が含まれる。たとえば、階級・人種・ジェンダー等に特徴的な文化のあり方が単純に毀損されることなく可能な限り尊重されるかたちで、普遍主義的な科学的思考や支配文化へのアクセス可能性の平等主義的拡充を図るべく、教育課程編成における知識間の関係づけ・構造化、あるいは知識の抽象的統合化が重視される必要があること、あるいは、近年の先進各国における教育改革動向で重視されているコンピテンシー・ベースのカリキュラムへの改革は、ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)やデモクラシーという理念との明示的接合を目指すことによってより社会的に公正な教育の実現に資する可能性が高いのではないかという知見を整理することができつつある。 また、これら以外に、日本国内での新たな実地調査先を開拓し、調査を開始できたことは、以上の研究のさらなる進展に向けて意味のある新たなステップなったように思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
世界的なCOVID-19拡大状況の影響で、調査訪問を実施することができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19をめぐる状況の劇的な改善は見込めないので、可能な限りこれ以上の期限の延長はせず、この科研研究で当初予定していた海外実地調査の一部を実施し、来年度以降発表の機会を探る最終成果の報告につなげたいと考えている。特に調査対象としていた学校にこれまでにない異変が生じているという情報を入手しているので、その異変の実態をできるだけ正確に理解するための聞き取り調査を実施したい。 他方、日本国内で新たに開拓した調査対象となるある大都市圏にある総合制高校の調査を継続し、「準市場を介した社会的に公正な学校教育の可能性と課題」の考察に資する事例研究の進展を図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19拡大状況により、当初予定していた海外実地調査が全く実施できなかったために次年度使用額が大幅に生じることになった。
今年度は、状況が許す限り、予定した板海外実地調査をたとえ部分的にでも実施し、必要な資料・データの収集に努めたいと考えている。しかし、その予定が叶わない場合には、国内実地調査を大幅に増加させるとともに、オンラインでの資料・データ収集を中心に作業を進めたい。同時に、これまでの研究成果を学会等で分割的に報告する予定である。
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