研究課題/領域番号 |
19K02572
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研究機関 | 愛知大学 |
研究代表者 |
加藤 潤 愛知大学, 文学部, 教授 (80194819)
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研究分担者 |
田川 隆博 中部大学, 人間力創成総合教育センター, 准教授 (10454448)
今津 孝次郎 星槎大学, 大学院教育学研究科, 教授 (30025118)
林 雅代 南山大学, 人文学部, 准教授 (40298550)
白山 真澄 (白山真澄) 東海学院大学, 人間関係学部, 教授(移行) (60726909)
長谷川 哲也 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (90631854)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 学び直し / リカレント教育 / リスキリング / イギリス / 骨太の方針 / ジェンダー / 学歴階層 |
研究実績の概要 |
本研究の最終年度である2022年度では、学び直し政策と実際の企業従業員の学び直し意欲のズレを、学歴階層、ジェンダー等、様々な指標を用いてクロス分析を行った。さらに、これまで体系的に議論していなかった、日本人と欧米人(本研究では、イギリス人を調査対象としている)の労働観、人生観、転職観などの価値軸で比較分析した。ここからは、極めて興味深い知見が得られた。すなわち、転職を繰り返すイギリス人のライフスタイルは、欧米に特徴的な文化ではなく、経済構造、制度的インセンティブが作り出しているという発見である。翻ってみれば、日本人の労働市場がモービリティに欠けるのは、保守的な文化風土という言葉では説明するより、転職する制度的インセンティブが少なく、労働市場も転職を阻んでいるからである、と結論づけられる。 これら、実態調査と国際比較調査を照合すると、我が国の「学び直し政策」に重要な政策インプリケーションが得られる。それは、我が国の学び直し政策が、高学歴者、都市に偏っている現状を変え、誰もが、人生のいつの時期でも学び直しすことのできる教育制度、財政支援制度を提供すれば、国民性という言葉で片付けられてきた日本人の保守的なライフスタイルは、極めて短期に変化するということである。 この、政策提言を含んだ知見は、広く社会に発信すべき内容である。そこで、本研究の集成として、これらの知見を章立てし、一冊の出版物として、社会的発信を行った。結果的に、これが、今津孝次郎、加藤潤編著『人生100年時代に「学び直し」を問う』東信堂、2023年2月刊、となって著された。研究開始当初の予想どおり、政府による学び直し政策と実際の人々の意識が乖離していることを、ここに立証できたものと考える。さらに、それは批判的分析にとどまらず、次なる学び直し政策への提言にもなったことが、本研究の社会的意義であると考えられる。
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