研究課題/領域番号 |
19K02574
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
出羽 孝行 龍谷大学, 文学部, 教授 (20454530)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 生徒自治 / 専門的学習共同体 / 学校民主化 / 自発性 / 京畿道 |
研究実績の概要 |
当該年度は本来研究計画2年目に実施予定であった革新学校における学校民主化の取り組みと現状についての研究を行うべく、現地の学校を訪問した。 具体的には、革新学校における生徒会活動の現状を探るとともに、革新学校における教師の実践状況を知るために、京畿道内の3つの高等学校を訪問して主に生徒会活動の実態についての調査を行った。その結果、以下の点が明らかになった。 まず、韓国において生徒自治は法的に保障されている中で革新学校は生徒自治を促進するための条件が整っていることがわかった。2点目に生徒自治の中心は生徒会であり、生徒会活動を行う生徒は自発性を有していることが確認された。3点目に、生徒自治は革新学校の理念のうち、民主性、倫理性と関係していることが確認できた。4点目は教師が生徒の自治活動に関わることによって教師自身の立場性を乗り越えられる可能性があることが判明した。一方で、実際に生徒自治活動を行う条件は限定されている点や、自治活動から取り残される生徒もいる点などは課題である。 これらの点を踏まえて、今後の革新学校における生徒自治活動の方向性について以下の点を指摘した。 まず、革新学校が普及していく中で従来のように一般学校と明確に区別することが難しくなっており、リーダーとなる教師によって新しい形の革新学校を模索する必要がある。2点目に、教師が自発性を持ち内実ある専門的学習共同体を運営できるように、生徒対教員数を増加させる必要がある。3点目に、児童生徒人権条例の精神を教育現場で周知しながら、生徒と教師の関係性を問い直せるような行事を設定する。そして4点目に、公募制校長制度など、既存の制度を活用して学校民主化を進める、等という点である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年より始まった新型コロナウイルス感染症の世界的流行により、昨年はじめまで海外渡航自体が難しく、学校自体も正常化されていなかったために調査そのものが実施できなかったことが最大の理由である。2020年度、2021年度は海外渡航がほぼ不可能であったが、2022年度は韓国においても少しずつ外国人の入国を緩和し始めた。それによって当該年度は学校での調査が可能になったために遅れていた計画を少しずつ実施することが可能となった。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度の調査に基づき、専門学会での口頭発表を行った。今後はこれらの研究の不足点を補いながら論文を執筆する作業を進める。また、2022年度の統一地方選挙により、公選制が導入されてから初めて京畿道において保守の教育監が当選し、これまで進歩教育監が進めてきた児童生徒人権条例や革新学校政策が見直される運びとなった。こうした行政の変化を踏まえながらも、これまでの革新学校の成果を調査し、革新学校で勤務した経験のある教師に対するインタビューを行うと共に、革新学校のモデルを数校選択し、その学校での実践記録についても調査していくこととする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究計画が遅延しているため、2022年度までにおいても予定していた支出をすべて行えなかった。遅延の理由は先に述べたように、新型コロナウイルス感染症の世界的流行によるものである。
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