当該年度は以下の二点の研究活動を主に行った。 まず、高校での非教科活動の評価がどのように行われ、それが上級学校進学時にどのように活用されているのかについての文献調査を行った。非教科活動として設定されている「創意的体験活動」の中の「自律活動」には、革新学校において重視されている学級活動や生徒会活動が含まれることから、生徒の自発的な活動が高等学校での「評価」として反映される部分である。本研究においては、学校生活記録簿(日本の指導要録に相当)における創意的体験活動の記録の記載内容が上級学校進学時に有利に作用するとの直接的なエビデンスは見いだせなかった。ただ、韓国の大学入試の中心を占める随時募集選抜において、非教科部分の活動は面接や自己推薦書などで有利に作用することが考えられるため、革新学校に通うことが上級学校進学時に不利に作用するとは言えないことは明らかである。 当該年度のもう一つの主な取り組みである、革新学校に指定されている高校の生徒や教師への聞き取り調査の結果から、生徒らは革新学校であるか否かを高校進学の基準にしていないことがわかった。しかも、調査を実施した学校の生徒らは自身の通っている高校が革新学校であることを特別意識していない。但し、教師らは革新学校の重要要素の一つである「専門的学習共同体」を学校毎に複数組織し、それに各教師が加入して定期的に教師同士が特定のテーマで意見交換をしたり、研究をしていることが確認された。ただ、近年の韓国の学校では革新学校以外でも専門的学習共同体が組織されていることは珍しくない。また、取り組み状況は学校毎に大きな偏差があることが考えられる。一部の革新学校は教師の研究活動や生徒の自主的な活動が奨励され、それが教育的に意味あると認知されている場合もあるが、それ以外の革新学校では実体が伴っていない場合も多いことが窺われる。
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