研究課題/領域番号 |
19K02575
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
畝川 憲之 近畿大学, 国際学部, 教授 (10388332)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | フィジー / 民族 / 国民統合 / 教育 / 民族間交流 / Contact Theory / アイデンティティ / 多文化主義 |
研究実績の概要 |
フィジーでは、国民統合の達成が独立以来の最大の課題となっているが、統合は進んでおらず、その大きな要因の一つが、民族ごとに分離している初等教育の構造にあると考えられる。そこで本研究は、Allportらの主張するContact Theoryを手掛かりに、(1)初等教育における民族間の交流促進が民族間関係の改善および国民統合の発展に寄与する可能性、(2)交流促進の実行可能性の各点についての検証を通して、フィジーの初等教育における民族間交流と国民統合について、総合的な検証に挑むものである。 初年度では、主に文献調査・研究を行うとともに、8月に現地調査を行った。フィジーの国民統合を教育の視点から考察を行った先行研究はほとんど見られないが、これまでに出版された書籍、論文の研究、新聞報道やWeb情報の調査を通して、政府がこれまでにどのような教育政策を起草、実施し、なぜ諸政策がうまく行かなかったのか、また現在の教育現場における民族間交流に関する情報の整理を行った。現地調査では、南太平洋大学の研究者、民族関係NGO、教育省役人へのインタビューを行った。本研究がフィジーの国民統合を考えるうえで非常に重要であること、フィジー政府も大きな関心を持っていることが確認され、諸団体より研究協力を得られることとなった。一方で、現政権は民族に関する資料の公表を行っておらず、また本研究のスタート段階で必要となる各初等教育機関の民族構成に関しての資料自体が存在しないことがわかり、教育機関一つ一つへの聞き取りが必要であることが明らかとなった。教育機関へのインタビュー、生徒へのアンケート調査の実施にあたり、教育省より研究許可証の発行を受ける必要があることがわかり、約半年間のやり取りの結果、令和2年3月に教育省次官より研究許可が下りた。これにより、令和2年度より本格的な現地調査が実施できるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画においては、研究初年度に、教育省より各初等教育機関の民族構成リストを入手し、民族構成(単一民族、多民族)によって教育機関のグループ分けを行う予定であったが、民族構成を示す資料自体が存在しないことがわかり、この点に関しては研究に若干の遅れがある。ただし、調査対象地域の初等教育機関のリスト(住所、電話番号、メールアドレス含む)はすでに入手しており、令和2年度より実施予定である教育機関でのインタビューの際に民族構成を確認することができるため、今後の研究予定に大きな影響はないと考えられる。 文献調査・研究は当初の予定通り進んでおり、先行研究の分析を通して、政府のこれまでの政策内容、その課題などの整理が行われた。また、当初の予定通り8月に1回目の現地調査を行い、南太平洋大学の研究者、民族関係NGO、教育省役人へのインタビューを行った。今後の調査において、諸団体より研究協力を得られることとなった。 研究許可証の発行に際して行われた教育省とのやり取りを通して、初等教育機関でのアンケート調査の際に必要とされる諸資料の準備が完了した。また許可証の発行により、令和2年度より本格的な現地調査が実施できるものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度は、(1)初等教育機関における民族間の交流促進が民族間関係の改善および国民統合の発展に寄与する可能性の調査、に加え、(2)交流促進の実行可能性についての調査、研究も開始する。(1)の調査結果により、民族間交流の国民統合への寄与が明らかとなっても、教育機関の母体(政党を含む)からの合意がなければ、民族間の交流促進の実行に舵を切ることができない。 (1)に関しては、初等教育機関リストをもとに、フィジー最大の都市スバにある85の初等教育機関と連絡を取り、教職員へのインタビュー調査、民族構成をもとにした初等教育機関のグループ分け、生徒へのアンケート調査の実施を行う。本調査においては、適宜、教育省から助言、サポートを受けることとなっている。 (2)に関しては、初等教育機関の母体となっている宗教団体、民族コミュニティ、そしてこれらの諸組織と深く関わる政党(政治家)へのインタビュー調査を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和2年度に国際学会での発表が決定しており、その予算に充当するために次年度使用の繰り越しを行った。 令和2年度の使用計画は、現地調査1回、国際学会発表1回、英語論文の校正となっている。
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