本研究の目的は、2015年末に発足したASEAN共同体、特に域内経済発展格差に揺れる社会主義からの移行経済国で未解決の教育課題となっている基礎教育学齢のニューカマー(ベトナム、ラオス、中国雲南地方国境を流出入する外国人児童生徒や無国籍の山地民児童生徒など)の初等教育・前期中等教育就学の阻害要因とその教育格差を多面的に分析することにある。ASEAN域内間の経済格差を是正し、域内最貧国の経済発展を目指す同地域において、初等教育のユニバーサル化は言うまでもなく、前期中等教育の拡充は不可欠な課題である。 多様なASEANメコン地域の移行経済国(最貧国)においていかにして越境児童生徒の就学を達成できるのか(就学格差の是正)、各研究者の専門性(開発経済学、教育社会学、比較教育学、教育経済学、文化人類学、メコン地域研究等)を持ち寄り融合させ、その方策とそれに対するASEAN共同体の教育協力ネットワーク構築の可能性を示す。 2019年度~2021年度は、ラオスを中心にベトナム、中国、タイとの国境3カ所に調査拠点を設定、3年の継続調査を実施する。 (国境1)ノーンカーイ県ノーンカー イ郡(タイ)=首都ヴィエンチャン(ラオス)第1メコン友好橋、 (国境2)ボーテン(ラオス・ルアンナムター県)=モーハン(中国雲南省)、 (国境3)デンサ ワン(ラオス・サワンナケート県)=ラオバオ(ベトナム)において、ラオ・中国・ベトナム家族と各国教育協力ネットワークへ面接とアンケート調査を実施予定である。 補助事業期間の最終年になる2021年度も、新型コロナウイルス感染対策として日本国外への研究調査は実質的に不可能であった。海外研究協力者の自国内調査も難しい状況であったため、現地企業側の学歴別雇用状況を聞き取調査から把握することとした。
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