研究課題/領域番号 |
19K02579
|
研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
香曽我部 琢 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (00398497)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 長期就業 / ポジティブ感情 / 保育士不足問題 / ワークエンゲージメント / 保育者効力感 |
研究実績の概要 |
本年度は、コロナのため、実験などによる研究は進めることができなかったが、オンラインによる保育者への聞き取りや、wifiカメラを通じた保育園での保育者の姿を観察することができた。オンラインでの保育者への聞き取りでは、保育実践の動画データを画面で共有しながら、それを刺激素材として、保育実践での『働きがい(ワークエンゲージメント)』について保育者の暗黙知を可視化することができた。言語データの分析から、保育者が子どもの成長や保護者との関わり合い、保育者同士での実践の関係性の深まりなどを働き甲斐として認識していることが明らかにされた。 また、保育者が保育実践において、実際に子どもたちと関わる姿から、自分の援助や環境構成が子どもの成長に寄与した点について、その援助の意義について相互行為分析で明らかにした。保育者が、子どもの言動に対して即時に対応したり、事前に準備した環境構成への気づきを促したりする援助行為に対して、保育者が価値を感じ取っていることが明らかにされた。とくに、子どもの表情や視線の動きを敏感に感じ取りつつ、次の援助に向けて環境を構成している姿が明らかにされ、保育者の暗黙知が働きがいと強く関連していることが示された。 NIRSの研究成果から、刺激として用いた映像データと発問の内容によって、異なる部位の血流量が増加することが明らかにされた。前頭前野の血流量が増大することは、ポジティブな感情を生み出しやすく、社会的なストレスへの耐性(レジリエンス)が高まることが先行研究で示されていることからも、視覚素材を用いたカンファレンスが、保育者のワークエンゲージメントを高める可能性が示唆される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究発表は、コロナ禍のためなかなか進められなかったが、データ収集と分析については順調に進展している。とくに、データ収集は、オンラインインタビューなどのデータを蓄積することができた。 分析についても、ある程度分析のための準備段階まではすすめることができたので、あとは分析とさらなるデータ収集を往還的に実施する必要がある。 しかしながら、NIRSによる働きがいを脳の血流量で測定する研究や、唾液によるストレスの生体指標などのデータは一切測定することができなかった。接触が伴う実験は、コロナの感染力が変異株などの流行を考えると、ワクチン接種後でなければ研究倫理的にその実施は難しいと考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、ワクチン接種の状況を鑑みつつ、ワクチン接種した保育者を対象としてNIRSを用いた実証的な研究を実施したいと考えている。 さらに、昨年度に収集したインタビューや観察による映像データの分析を随時行いつつ、さらに保育実践の観察を行っていきたい。 また、コロナがさらに流行する状況に対応するために、保育者が日常的に行っている保育記録についても情報提供をおねがいしている。保育記録の記述をとおして、保育者が子どもの成長をどのように読み取り、自らの保育実践へ活用しているのか、そのプロセスを通じてどのようなポジティブ感情を見出しているのかを明らかにしていきたい。
|