保育者のワークエンゲージメントとして、保育実践において子どもの発達や成長を見取った経験が示された。子どもの発達や成長の状況を知るためには、子どもを理解する力が必要であることから、子ども理解が保育者の専門的資質の向上や就業継続において重要なファクターとなることが示唆された。実際に、文部科学省も平成31年に「幼児理解による評価」を刊行し、幼児理解を出発点にして保育を営むことのについて、「その幼児が今、何に興味をもっているのか、何を実現しようとしているの捉え続けていかなければならないのです」と示し、保育者にとって子どもの気持ちを捉え続けることのを重要性を示している。 そこで、本研究では、保育者がどのように幼児理解をしているのか、そのプロセスについて、映像素材を用いたインタビューと、NIRSを用いた脳血流動態を測定も同時に行った。その結果、他園の幼児と自園の幼児の違いについては、他園の幼児の写真の方が、写真から情報を得る過程で、快・不快ともに情動を高くなることが明らかにされた。自園の幼児については、既知の情報を整理して、その幼児理解を背景も含めて話しているために前頭部分の血流は次第に落ち着いていくことが示された。さらに、保育者の熟達度の違いについては1回目から3回目にかけて事実から想像へと幼児理解の内容を変容させていく点は同じだが、不快情動を高める初任群に対して、快情動を高めて維持している点に違いがある。熟達群でも、初任群でも、他園児の方が血流が高く、自園児は低い。唯一、自園児については熟達群は血流量が低く、初任群の方が高い。自分の園の幼児への子ども理解を語る際に、熟達群が情動を生起させず、情報を整理して安心して語っていることが示した。 以上の知見から、保育者が子どもを理解するプロセスには、経験年数によって違いがあることが実証された。
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