本研究では先ず,保育者の自伝的記憶としての「アイデンティティの揺らぎ体験」と保育者効力感との関係を検討した。揺らぎ体験の有無が,保育者効力感に与える影響を分析した結果,揺らぎ体験を持つ保育者は,それを持たない者と比べ保育者効力感が明らかに高かった。揺らぎ体験の契機による保育者効力感の相違は見出されなかった。次に,保育者効力感の高低による,記述内容の相違を検討した。その結果,保育者効力感の高い保育者の記述は,自我関与性が高く,今後に活かしやすい形で記憶が保持されていることが示唆された。これらの知見から,アイデンティティの揺らぎ体験を活かす支援プログラムの枠組みを具体的に提案した。
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