研究実績の概要 |
本研究の目的は、貧困、虐待、家庭崩壊、非行問題や近年の日本社会が抱える多様で慢性的なストレスなどの問題を状況下に育っていながらも、リスクにうま く対処し悪影響を克服して成長できる子どもたちの姿を示すレジリエンスのメカニズムを明らかにし、レジリエンスを形成するための効果的な学校教育の方略を示すことである。 本研究は、自律神経系のストレス反応モデルからの知見である扁桃体の過敏性など、神経科学的視点を取り入れた生物・心理・社会モデルに基づいた中学生のレジリエンス形成のメカニズムを、学校での教育活動に適用し、その効果の検証を目指すものである。具体的研究方法として、1横断的調査による生物心理社会モデルからのレジリエンスの形成メカニズムの調査。2同一コーホート集団に対するレジリエンス形成メカニズムの縦断的追跡調査。3同一コーホート集団に対する学校教育におけるレジリエンス形成モデルの構築とモデルの検証。 新型コロナ感染症対策が続き、当初の予定を変更し、2年の期間における変化を追跡する調査として1年目を実施した。 本調査では、レジリエンスを実現している状態をエンゲージメント状態とし,スクール・エンゲージメント概念を取り上げ,小中学生用のスクール・エンゲージメント尺度を作成し信頼性と妥当性を検討した。スクール・エンゲージメント尺度は感情的エンゲージメント、行動的エンゲージメント、認知的エンゲージメントの3因子で構成され、構造方定期モデリングの手法を用いて信頼性の検討を行った結果、GFI=.84,AGFI.75,CFI=.87,RMSEA=.045,AIC=1577.83)となり、信頼性が確認された。本研究で作成した尺度により、レジリエンスの調査を再開した。
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