研究課題
本研究の目的は、子どもの多様化が進む保育現場において、これまで障害児との共生を中心に理論化されてきたインクルーシブ保育に、外国にルーツのある子どもを中心とした多文化共生保育の視点を加えることで、これまでの理論を批判的に検証し共生をキーワードとする包括的なインクルーシブ保育の理論を再構築すること及び実践の検討を通して実践モデルを提案し理論と実践の往還を図ることであった。共同研究者7名での主な取り組みとして、2019年、2020年、2022年に「障害と多文化を包括するインクルーシブ保育の可能性」、同(2)(3)のタイトルで保育学会第72、73,75回大会において自主シンポジウムを開催し、障害を中心としたインクルーシブ保育と多文化共生保育を融合する新たなインクルーシブ保育理論を模索した。具体的には、多様な保育実践を分析し両者を包括する理論の枠組みを検討した。2021年には第74回大会でコロナ禍の調査「コロナ禍におけるインクルーシブ保育の可能性(1)(2)」のポスターを発表し、新たな保育の可能性に関する知見を得た。これらの一連の共同研究等から明らかになったのは、障害と多文化の両者を包摂するには、子どもの人権の尊重、特に意見表明権に着目することであった。意見表明権の保障によってどの子も排除することなく保育に参加することが可能になることを保育実践の分析を通して明らかにし、保育がインクルーシブになるための5つの原則を提起した。これらの研究成果は7名の共著による「すべての子どもの権利を実現するインクルーシブ保育へ:多文化共生・障がい・家庭支援・医療的ケア」(ひとなる書房2023年4月)に著し公表している。4年間の共同研究を通して、インクルーシブ保育に共通の価値と実践における具体的方策を提案することができ、障害と多文化の包摂を超える、より包括的な理論構築と実践モデルの提案を行うことができた。
すべて 2023 2022
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