研究課題/領域番号 |
19K02599
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研究機関 | 神奈川工科大学 |
研究代表者 |
上田 麻理 神奈川工科大学, 情報学部, 准教授 (70786409)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 高周波音 / 空中超音波 / 耳介 / 頭部伝達関数 / 誤差 / 身の回りの高周波音 / 音響計測 / 子ども |
研究実績の概要 |
ヒトの可聴閾値の上限周波数は20 kHz程度とされているが,子どもの中には28 kHz(110 dB)を検知できることが確認されている.高い周波数の音が,どのような特性やヒトへの影響を示すかなどの系統的な研究は少ないため,我々は16 kHz~32 kHz程度の,高い周波数の空気伝搬音をVHF音の閾値計測などの研究を行ってきた.医学的な聴力検査などではヘッドホン呈示による検査が一般的であるが,VHF領域の閾値を計測する場合,正確な音圧校正と計測が特に困難である.そこで,申請者らは,ツィータを用いたVHF領域の可聴閾値の計測をこれまでも行ってきた.スピーカ呈示によるVHF音の可聴閾値計測では,波長が短いため音が回折しないことから,聴取者頭の位置や向きの僅かな変化でさえ聴取音圧の変化が生じてしまい,音圧校正が困難である.1 6 kHzを超える純音の聴覚閾値の計測の際,頭の小さな動きは音圧に深刻な影響を与える可能性がある.その他,耳介形状や頭部形状によって耳介付近の音圧に個人差が大きく生じてしまうことが示唆されている.また,スピーカの線形性の問題も挙げられる.音圧レベルを上げるとスピーカから低周波歪みが生じ,そこで音を誤認してしまう場合がある.これらの要因はスピーカ呈示による閾値計測の正確さの担保が難しいことを示唆している.しかしながら,頭の位置や角度の変化による音圧の変化量や,どの程度誤差が生じているかを知ることが出来れば,スピーカ呈示によるVHF領域の閾値の正確性を担保することが出来る.そこで,本研究ではスピーカ呈示でのVHF領域の閾値計測の正確性を担保する為,HATSを用いて,10 kHz~22 kHzの周波数範囲において,頭部の位置と角度による聴取音圧の変化を計測・評価した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
COVID-19を受けて,ヒトを実験参加者とした聴覚閾値の計測を回避し,HATS(ダミーヘッド)を用いた高周波領域の頭部伝達関数(HRTF)の計測を行い,耳介や頭部の形状がVHF領域の音圧に顕著に寄与することが示唆された.これらの結果はVHF領域の聴覚閾値計測にとって重要な知見である.
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今後の研究の推進方策 |
より広いVHF領域の計測データを取得する計測方法への改良を行い,統一された測定条件下でHATSのHTRFを測定し,耳介や頭部など個人差が生じる要素がVHF音の聴こえに与える影響の解明を行う.また,同時にCOVID-19の状況を鑑みつつ,ヒトを対象とした閾値計測なども再開していく予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19によりヒトを介した実験からダミーヘッドを用いた実験に変更したため,被験者代等が発生しなかった.22年度はヒトを対象とした実験の再開見込みがでており,状況に配慮しながら安全に実験を行う予定である.その際の被験者代や旅費,国際会議での発表などを必要経費として使用予定である.
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