研究課題/領域番号 |
19K02601
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研究機関 | 千里金蘭大学 |
研究代表者 |
小島 賢子 千里金蘭大学, 看護学部, 教授 (00568389)
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研究分担者 |
大方 美香 大阪総合保育大学, 児童保育学部, 教授 (80233055)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子どもの療育環境 / 医療環境と成育支援 / 多職種との協働 / 専門性 |
研究実績の概要 |
医療保育士の専門性について理解するため、および、現時点の医療保育の課題や医療保育士の研究分野を明らかにするため日本医療保育学会に参加した。 基調講演テーマ「病気の子どもを支える医療環境と成育支援について」で、宮城県立こども病院院長今泉益栄氏が明らかにしたことは、入院中であっても、日常生活の遊びや学校とつながる療育環境が重要であるということであった。また、教育講演では、保育と病児保育の歴史から、医療保育士が子どもの権利を守り、家族を支えているという社会的意義をもつことや、医療保育士は医療環境の中にいる子どもと家族の厳しい状況を支えるのみならず、社会情緒的能力の発達を促しているという役割が明らかになった。病児保育室の保育士による安全で安心な保育の提供という観点や、保育士等の活動を体系化し評価する重要性や医療保育での子どもと養育者のより良い関係性を支える必要があることが明確になった。医療保育に保育所保育士指針の5領域の視点を活用した研究は、5領域を基盤とした医療における保育の重要性が発表されていた。 そして、子ども病院では、療育環境を支える様々な職種が存在し、それぞれの専門分野から、子どもの療育環境を支えている。これらすべての職種が子どもと関わることが子どもの権利を守るうえで必要なことである。そのため、多職種との専門性の違いや医療現場における看護職との連携は必然であり、それぞれが対等な関係の中で行われなければならないと明らかになった。このことが、学会に参加した成果である。 以上から、1.保育士の養成課程におけるカリキュラムを基盤とした医療保育士の展開カリキュラムが必要であるということ、2.医療保育士の置かれている現状から、医療保育士が発する保育の専門性をどのように多職種に浸透させていくのかということを明確にするため保育士養成課程の分析、および療育支援の職種の協働意識について研究する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究を進めるうえで明らかになったことは、少子化や、子どもの入院数が少ないということから、小児病棟およ小児専門病院の数が少数であるということによって、病院の医療保育士の数が少ないということである。そのため、研究の初年度の計画である、医療保育士の面接による質的研究の対象者の条件を一定にすることに時間がかかった。 また、専門分野の識者から助言をいただくと、子どもの療育環境を支える職種が、医療保育士だけでなく、チャイルドライフスペシャリスト、ホスピタルプレイスペシャリスト、子ども療養支援士、保育士があり、子どもの心理的準備を整えたり、保育として遊びをするなど同じようなかかわりの中に専門性を少しづつ違えながら子どもと関わっていることが明らかになった。そのため、医療保育士である対象者の抽出に時間がかかっている現状にある。 さらには、子どもへ提供する技術や方法(例プレパレーションや遊び)は職種間で同様のものがあり、実施結果の後の子どもへの効果期待が同じであるため、実施後の評価に大きな差が認められないことが学会に参加して実感することとなった。そこで、医療保育士の専門性をもとに知識と課題をインタビューで明らかにするためには、インタビューガイドをより明確に精度を上げる必要があった。そのため、学会への参加と文献検索に時間を要した。 保育養成カリキュラムについては、医療保育士を前提としたカリキュラムは見受けられなかった。また、医療保育士の専門的なカリキュラムを擁立する大学は少なく、あっても方向を転換させていた。そのため、当初の予定としたカリキュラムの分析については、研究分担者とともに、今後の方向性を考える必要があった。以上から、当初の予定よりはやや遅れているが、漠然とした研究課題から、より焦点を絞った研究へと進んでいると考える。
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今後の研究の推進方策 |
医療保育士の専門性に基づく知識と課題を明らかにする医療保育士との調査は、インタビューガイドを明確にし精度を上げるために、文献レビューをしたうえで作成する。文献レビューを学術誌に投稿し、まず医療保育士の現状と課題、専門性の方向性について文献から、示唆を得る。プレインタビューを行い、より、実質的で知識と課題が明らかになるインタビューガイドを作成する。その後、実際の医療保育士(県立および府立子ども病院で働く医療保育士)10名を選出し倫理的配慮を行ったのち面接による質問紙調査と質的研究を行う。 保育士の専門性を追求したカリキュラムについての研究を文献レビューし、研究分担者とともに分析、検討する。そののち、チャイルドライフスペシャリスト、ホスピタルプレイスペシャリスト、子ども療養支援士、保育士とのカリキュラムの違いを分析し、その結果から医療保育士の専門性を検討する。また、保育の専門性を明確にするためのカリキュラムの在り方とそれを基盤とした医療保育士のカリキュラムへのつながりを追及する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
第23回日本医療保育学会学術集会に研究代表者と研究協力者と2人で参加した。その際の参加費と旅費である。また、医療保育士へのインタビューを計画しており、事前に必要な機材を必要数購入した。 次年度使用計画は、研究協力者による医療保育士へのインタビューのための費用が必要となる。医療保育士は子ども病院の医療保育士へのインタビューを計画しており、宮城県、大阪府、兵庫県、神戸市、埼玉県、愛知県の子ども病院に要請する予定である。そのための旅費と謝金が必要である。また、対照群として多職種へのアンケートを考えている。 科研費申請では外国の医療保育士の実態やCLSの養成場所を見学するという計画を立てていたが、新型コロナの影響を考えると、次々年度への計画変更が妥当であると考える。そこで、計画修正として、日本でHPSを要請しているを静岡県立短期大学を見学することとして、謝金と旅費を使用する予定である。
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