研究課題/領域番号 |
19K02604
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研究機関 | 広島文化学園大学 |
研究代表者 |
山崎 晃 広島文化学園大学, 学芸学部, 教授 (40106761)
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研究分担者 |
濱田 祥子 比治山大学, 現代文化学部, 講師 (20638358)
松井 剛太 香川大学, 教育学部, 准教授 (50432703)
越中 康治 宮城教育大学, 大学院教育学研究科高度教職実践専攻, 准教授 (70452604)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 幼小接続 / COVID-19 / 接続カリキュラム / 発達の捉え / 個別の教育支援計画 / 個別の指導計画 |
研究実績の概要 |
1.本研究の目的は、幼小接続をスムーズにする鍵は何かを基本的な問いとして、スムーズな接続を実現する要因を探り、それを基に具体的対応策を提案することであった。令和3年度は、以下の3つの研究成果を得た。 (1) COVID-19が就学前施設及び小学校の就学移行期のカリキュラムへ与えた影響を検討した。その結果、子どもや保育者,小学校教員への影響は大きく,2020年度入学児童の就学移行については子ども,保育者や小学校教員,家庭などの自助努力に委ねられていることが明らかにされた。コロナ禍での子どもの育ちや環境移行の責任を就学前施設,小学校,家庭へ帰結することなく,検討を続ける必要があることが示唆された。 2.保幼小連携・接続に関して、一人の児童の事例を提示する場面想起法を用いて、保育者と小学校教員の関わりの特徴を明らかにするとともに,連携・接続に関する新たな視点を探った。その結果,接続期の児童との関わりや環境構成の工夫について,小学校教員が就学前施設の方法を受け入れつつ進めている実態が示された。今後は,「就学前施設では~,小学校では~」という言及ではなく,「この子どもには~」という議論が求められることが示された。 3.幼稚園における幼児教育アドバイザーの助言や指導・支援に関して、幼稚園における約 1 年間の幼児教育アドバイザーの指導に変化がみられるかを検討した。その結果、第1期は幼児の発達の状況、園や保育者・保育の課題、第2期は幼稚園、保育所と小学校の組織やシステムの違いを認識することや保育者の幼児に対する指導・援助・保育に、第3期は幼稚園と小学校の指導の違い、幼児の発達段階、幼児の発達の理解、保育者の省察の重要性、第4期は保育内容や発達を確実に捉えること、及び保育者自身の認識や心構えに関する指導が多くみられ、幼児教育アドバイザーの役割の重要性を示す結果であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究での調査方法は、アンケート調査、その結果に基づいて行う半構造化インタビュー調査、そして文献調査の3つからなる。就学前施設及び小学校においては、COVID-19の影響が、子どもはもとより、保育者や小学校教員等の関係者に大きな影響を及ぼしている。日常の保育や授業に係る業務について最優先で関わっている状況がある。そのような「現場の状況」を間近に見るにつけ、研究協力の依頼をすることは不可能に近い。そのため、我々研究チームは、可能な限り研究テーマ、目的に沿って研究を進めるために代替の方法を考えながら、工夫して研究を実施してきた。その一つが、場面想定法を用いたアンケート調査を行うことにより保育者と小学校教諭の「課題場面における認識や対応の違い」を明らかにするという方法であった。できる限り調査対象となる先生方の負担をなくし、日常業務に支障を来さないようにするためにこの方法を採用した。この方法であれば、直接に出かけインタビューを受けることによる物理的・精神的負担に比べ、軽度になると思われる。 また、これまで研究チームメンバーがいわゆる現場に関わった際に得た幼稚園等の教育課程・保育課程の資料を活用することにより、「接続カリキュラム」「障害児教育カリキュラム」等がどのように保育の中に位置づけられ、活用されてきたかの歴史を垣間見ることができるように準備を進めている。 さらに、たとえば、全国附属学校連盟幼稚園部会による報告書等、入手可能な資料を得て、本研究のテーマ、研究目的に沿った分析方法等を策定している。
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今後の研究の推進方策 |
令和4(2022)年度は、令和3(2021)年度までの研究結果をもとに、 (1)定型の「接続カリキュラム」及び障害児のための「接続カリキュラム」に関して、教員が現状に関してどのように認識しており、何が接続期のカリキュラムに関する課題であるかを明らかにする質問項目を作成し、アンケート調査を実施する。研究協力者に、本調査のための質問紙を送付し調査を依頼する。研究協力者はそれを基に就学前施設や小学校に電話等により連絡を取り、調査目的や調査内容等について説明し、それを受諾した校園に質問紙を郵送し、直接研究代表者に返送してもらうように手続きをとる。(2)理想の幼小接続カリキュラムとは何かを、アンケート調査により明らかにする。特に、障害児に配慮した幼小接続カリキュラムとは何かを質問の中心に据えて実施する。(3)研究チームメンバーがいわゆる現場に関わった際に得ることができた幼稚園等の教育課程・保育課程の資料を活用することにより、接続期カリキュラムの変遷を個々の幼稚園の教育課程の資料を基に明らかにする。(4)全国国立大学附属学校連盟幼稚園部会等が出している入手可能な資料を収集し、検討・分析、本研究のテーマ、研究目的に沿った研究を行う。 また、研究の成果を幼稚園等にフィードバックし、内容の確認を行いたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウィルス感染症の拡大の影響に研究が計画通り進捗しなかったことによる。具体的には以下のような理由がある。 (1)調査研究の実施がWebによるアンケート調査のみに限定され、実際の保育現場や小学校現場での半構造化インタビューなどの直接に情報を得るための実地調査ができたかったこと。(2)幼小接続カリキュラムの先進的な取組を実施している自治体等への保育や授業の実態を視察したり、情報交換等を行うことができなかったために、必要経費が生じなかったこと。(3)研究発表や情報交換の手段がWeb等によるリモートによることになったため旅費の支出がなった。 以上のような事情(理由)により、2022(R4)年度に繰り越すことになった。
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