探求的学習に基づいて,保育者を志望する学生と地域の子育て支援者を対象に,子育て支援の知識と実践力の基礎を育成するプログラムコンテンツを,事前学習課題(反転学習)と模擬養育者(SP:Simulated Parent)との対話実習により教授する効果を検討した。令和5年度は,SP対話実習の回数を縮小した令和4年度の研究で得られた効果を再現できるか検討した。対象者は授業「子育て支援」を受講した保育系学生94名とSP15名である(内訳は地域子育て支援拠点事業従事者3名,元保育者1名,児童養護施設里親支援員2名,地域支援(養育里親,放課後児童クラブ事業,養育支援訪問事業従事者)3名,専業主婦6名)。結果として,令和4年度の研究で得られた効果が維持されていた。まず学生の相談観尺度のSP対話実習前後の検定結果は,相談に際して助言を与えるという相談観が有意に低下し,保護者の自己決定を重視する解決構築の相談観に変化したことを示していた。また,子どもの個別支援計画に関する情報収集と支援計画策定案の達成度に対するルーブリック評価の結果は,情報収集の達成度がやや低下したが支援計画策定令案は前年度と同様の効果が維持された。次に,プログラムに対する評価に関して,保育者を志望する学生からも模擬養育者からも高い評価が得られた。以上より,令和5年のプログラム実施による達成度は,過年度のアセスメントよりも効果が向上した令和4年度の結果とほぼ同様だった。しかしSP対話実習を含めたプログラムとその教授法について保育者養成校教員に評価を求めたところ,その目的や効果については概ね肯定的に評価されたが,費用対効果の問題等が指摘され,地域子育て支援人材の育成だけでなく現職保育士研修として展開する等の意見が得られた。なお,今後もこの実践を継続するため,最終年度は,事前学習課題の情報を改善するための3つの調査を行った。
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