研究課題/領域番号 |
19K02608
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研究機関 | 大阪芸術大学短期大学部 |
研究代表者 |
森岡 伸枝 大阪芸術大学短期大学部, その他部局, 准教授 (20448187)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 文部省推薦図書 / 幼児 / ジェンダー |
研究実績の概要 |
今年度は、これまでの収集した資料(雑誌「社会教育」)や昨年度の2回の学会発表におけるフロアからの助言や質問などもふまえながら、論文執筆の構想・執筆に取りかかった。その結果、当時の文部省が幼児の絵本に対して、戦況を直接的に伝えることは避けること、わかりやすい文章にするなど、一定の配慮がみられた。つまり、文部省推薦絵本は当時の発達心理学の影響を受けており、幼児の理解能力に応じた内容や色、構図を追究していたといえる。しかしその一方で、これまでの先行研究でも語られてきたように、戦時体制に向けた教育政策の影響、例えば国民学校令の影響もみられ、「皇国民」という直接的な表現ではなく「少国民」として幼児がまなざしの対象となっていたことも確認できた。すなわち、国民学校令の時期に発行された国語の教科書にあるような、つよい子ども、たくましい子ども、負けない気持ちなどの表現が絵本にもみられ、間接的にではあるが、戦時体制下に対応できる子どもを育成しようとしており、大正期に流行したような子どもの純粋無垢さを伸ばすのではなく、時代の要請に応じた我慢、忍耐を新たに強調するしていたことも見逃してはならない事実であった。また、絵本を読む母親に対しては、子どもに「正しい」絵本を選択して与え、読み解き、しつけるということが求められており、読書指導がなされていく過程を確認した。つまり、母親に課せられる教育的役割が次第に拡大し、その責務が解かれるようになっていることが特徴的であった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
直接的な先行研究が僅少のため、文部省の推薦図書制度そのものについて、詳細に調査すること自体に膨大な時間を要している。本研究課題について、さらに踏み込んだ分析が必要ではないかと思うに至り、これまでの数々のジェンダー研究について再調査し、本研究と関わる時期、すなわち戦時体制下の女性や子どもに関する研究論文、著書の収集と精読に努め、それをまとめていく時間が必要であった。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の調査をまとめながら、研究論文を完成させていく予定である。ただ、コロナ禍によって、本来調査予定であった、アメリカでの文献調査、東北などでの資料館調査は、調査先が感染防止策として閉鎖されていたり、海外渡航自体が未だ困難な面が残っている。したがって、予想外であったこの状況にどう対応していくのか、海外研究をいつ、どのように行えばいいのか、といった課題は残るが、常に最新の状況をチェックし、タイミングを見計らいながら遂行するチャンスをあきらめずに待機したいと考える。また、それまでにできる限りの策、例えば今できる範囲で収集した資料で論文作成は可能であるので、そこに注力していきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は従来予定していた調査研究で海外出張や国内出張することが、感染防止策の影響を受けて調査先の閉鎖などに直面し、実現できなかったため、使用することが困難であった。次年度は、おそらく状況は改善すると見込んでいるので、積極的に調査に行きたいと考えている。
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