研究課題/領域番号 |
19K02615
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
山田 伸之 高知大学, 教育研究部自然科学系理工学部門, 准教授 (80334522)
|
研究分担者 |
丁子 かおる 和歌山大学, 教育学部, 准教授 (80369694)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 防災保育 / 効果検証 / 地震防災 / 防災教育 / 乳幼児 |
研究実績の概要 |
本課題は,地震の揺れを経験することの少ない地域の子供たちでも,突然の強震動(地震の強い揺れ)に見舞われても『人的被害ゼロ』にするために,敢えて「体験型」を掲げた防災保育の質的改善に寄与することが最大の目的である。その中では,防災保育の質的改善のために①擬似体験を通じた効果的で印象に残る教具教材と飽きない教育啓蒙手法の開発拡充,②模範的防災保育実践の水平展開,③防災保育の妥当性の検討を含む効果検証手法の開発の3本柱に取り組むことを目指している。 研究期間1年目の令和元年度は,1)地震動の知見など科学的な内容をいかに年少の子どもたちに伝えるかの内容や方法について検討し,2)形作ったものを実際の保育の場で活用試行した。また,防災保育を実践しながら現場職員および保護者への再教育を通じた園全体の防災力を高めるサポートを試み,本課題の足場を固めることを中心に行った。前者1)については,これまでに形作っていた,あるいは修正した教具を2)として活用し,体験的要素を拡充し,乳幼児のみなが取り組める内容とするとともに,保育士らの防災保育の実践力向上のための試行実践を行った。また,これまでの防災保育の効果検証のための資料(地震時の保育園での映像記録,ヒアリング記録,行動記録など)を収集・整理し,活用できるように整えた。さらに,その効果検証のための分析解析手法の開発作業も同時に進めている。なお,今年度末に予定していた保育実践に関係する部分は,感染症拡大の影響で,一時停止となっているため,別の機会に実施することとしている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は,研究代表者の所属機関での業務過多が生じたため,また,年度末の新型感染症の蔓延により,予定していた協力園での実践や情報収集等の活動の多くが見送られたため,計画の十分な遂行には至らなかったものの,未実施の内容の準備および態勢はすでにできている。そのため当初計画の遂行の見通しはある程度ついているとして,概ね達成することはできたと考え,この判断とした。 進捗状況の詳細としては,園での防災保育のの質の確認と検証実践および意見交換・情報収集等を行うことができず,遂行自体が一時的に止まっているものの,これまでの防災教育・保育の実践活動等で得てきた知見や情報の集約作業を実施し,これまでの連携協力園との連携強化はできたといえる。また,防災教育に関連する子どもたちや教諭・保育士および保護者等市民の意識の実態を,アンケート調査等を通じて探ることも行うとともに,保育士向けの防災保育研修を試行し,今後の道筋をつけることができた。園での防災保育の必要性だけでなく,通常業務の中での危機管理としての「防災」の重要性についても気づいてもらうことができたと考えられる。なお,今回の感染症拡大という新たな問題に直面して,それへの対応のあり方と防災という新たな局面に際し,あらためて考えさせられる契機ともなった。
|
今後の研究の推進方策 |
令和2年度は,当初計画よりも若干の進捗の遅れが生じているため,計画の時間軸を圧縮もしくは修正して遂行するものとする。特に,防災に関連する保育・教育および各種活動は,各種園のみならず広く市民レベルで充実化がなされつつある地域もあることから,地域の状況や実践連携園の実態を見極めながら,研究遂行に努めることとする。 今年度は,過去に実践活動を行った園との再連携および連携強化を重点化し,現場教職員への防災保育への意識とスキルのステップアップを目指す。さらに,昨年度までと同様に連携園の協力のもと,子どもたちへの防災保育と保育者や保護者たちへの防災教室を継続的に行い,現有する防災保育教材の見直しと防災保育の実施効果検証の方法の模索,現場教諭・保育士への再教育および防災保育の水平展開への取り組みを重点的に行うこととする。
|
次年度使用額が生じた理由 |
令和元年度は,研究期間1年目の準備拡充期であったが,本課題は,当初より低予算での研究遂行と最大限の研究成果の創出を常に考慮してきている。今年度は予算の消化をあまり行わない研究遂行を心掛けた結果,新規での購入物品等を最小限にすることができた。また,情報取集や成果公表のための旅費および協力園との経費を厚くし活用することを予定していたが,特に年度末にかけての新型感染症拡大によるあらゆる関連行事が中止となり,当初予定の経費を要することなく令和元年度が終了した。 本課題においては,前述したように低予算での研究遂行と最大限の研究成果の創出を掲げてきているため,令和2年度においても,これまでと同様に実践活動や教材・教育方法の開発製作などに創意工夫と自助努力による低コスト化を目指す。また,今年度は,研究成果の公表,対外的な情報発信を意識的に行うとともに,防災保育の充実化に資するコミュニティを構築するための経費に充当させることとする。また,新型感染症拡大の状況の推移を考慮しながら,引き続きこれまでの連携学校・園との関係の再構築と重点化,教材・教具の広報の仕方や各種課題への対応策の検討なども行うこととする。さらに,次期課題となるような防災教育・防災保育の新展開に向けた足がかりつくりのための活動にも注力し,予算経費を充当させることとする。
|