研究課題/領域番号 |
19K02618
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研究機関 | 白鴎大学 |
研究代表者 |
伊崎 純子 白鴎大学, 教育学部, 教授 (00341769)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 母子相互交流 / 縦断的観察研究 |
研究実績の概要 |
乳幼児健診において母子の関係性を捉える視点を提供する基礎データの収集を目的に、日本の母子の相互交流を0歳から5歳まで追跡調査を行なっている。本研究で収集された基礎データは愛着障害と発達障害の早期スクリーニングと予防を可能にする、関係性をチェックする項目の精緻化のための資料となる。 2022年度(令和4年度)は、2021年度同様、継続撮影中の延べ18組の撮影を予定し、最終的に6組(生後8ヶ月2組、3歳4組)の撮影を行った。Covid-19の乳幼児感染が目立つようになり、在籍園やきょうだい、家族のコロナ感染や感染不安を理由に撮影計画が中止となった事例が5例、感染拡大時期とタイミングが重複し計画すらできなかった事例が7例あった。2020年度より別枠で本研究に参加している13トリソミー(パトゥ症候群)のお子さんは入所した施設で、面会や外泊時に母が撮影、情報を共有している。 2022年度は感染の拡大はありながら、withコロナとのバランスを要請され、大学教員として増数した会議への参加要請は軽減されることはなく、対面授業と並行し希望学生に対し遠隔授業の対応も必要に応じて実施することとなり、映像資料の分析に用いる時間は2021年度同様、確保が困難だった。授業の一環でストレンジシチュエーションの原著を学生と輪読し、栃木県内の児童精神科医師・保健師・心理士(師)等と「乳幼児の心理的誕生」や「早期関係性障害」の読書会と事例検討に月に1回継続参加し、理論の理解を進めた。乳幼児支援の関係者との勉強会や研修会はオンラインで実施され、安全な映像共有が難しくディスカッションすることができていない。 ストレンジシチュエーション法について調査研究した内容は、論文(資料)として投稿、現在印刷中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
コロナにより当初の計画通りに撮影は進んでおらず、2022年度もコロナを理由とした撮影キャンセルは続いたため、5歳までの定期的な撮影は困難に直面している。キャンセルした幼児は実験室でストレンジシチュエーション実験に参加してもらうか複数の子どもを同室で撮影し、その社会性の発達を検討する計画だったため、家庭の様子をZOOMで見るという計画の変更は検討しなかった。撮影のキャンセルが続いたことは研究意欲を低減させ、同時にコロナに対応した大学教員としての仕事が増えたため、進捗は遅れている。 できることは続けることを意識し、まとまった時間が取りづらい中で4ヶ月時点の撮影に関する文字起こしや、乳幼児精神保健に関わる文献研究は進めることができた。どの映像部分をDVD化するかについて精査できていないため、DC :0-5に資するようなDVD化については、着手できていない。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、追跡中の研究参加者は全て2歳を超え、小集団での撮影により社会性の発達を検討する時期となるため、撮影時期の拘束が緩和される。 そこで、まずは、生後4ヶ月時点の映像の文字起こしに注力し、当初の目的だった家庭と家庭外の母子相互交流の差異があるかを検討する。2019年度に栃木で開催する学会はコロナで中止されたが、2023年度に類似の学会を栃木で開催することになった。そこで、今回の研究について発表し、まとまった内容を冊子化したい。 また、新たに、IPP(乳幼児-親心理療法)セミナーにオンラインで参加する機会と近隣市の乳幼児健診(1.6歳と3歳)に携わる機会を得たので、理論と実践の応用を図りたい。IPPセミナーは、日本乳幼児精神保健の専門家のための学びの機会としてカナダ精神分析的チャイルド・セラピスト協会及びトロント精神分析協会の講師2名と日本人講師2名による少人数のオンラインセミナーである。乳幼児観察をベースに、介入の方法を海外から学ぶことで、本研究の視点や臨床実践にも活かせる内容である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2022年度の学会開催日程に都合がつかず学会参加を見送ったこと、各種研修はオンライン参加だったこと等により旅費の未使用額が多かった。また、撮影キャンセルが多く、謝礼の未使用額も多かった。研究進捗遅れに伴い、冊子化が間に合わず、印刷費等の未使用額もあった。 (使用計画) 2023年度まで研究期間の再延長が認められたため、引き続き、未使用額はビデオ撮影・分析に伴う研究補助者に対する謝礼、冊子化、学会参加等に使用する。
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