研究課題/領域番号 |
19K02621
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研究機関 | 聖徳大学 |
研究代表者 |
奥村 典子 聖徳大学, 児童学部, 教授 (90648669)
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研究分担者 |
大塚 紫乃 江戸川大学, メディアコミュニケーション学部, 講師 (30735684)
齋藤 有 聖徳大学, 児童学部, 講師 (60732352)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 家庭教育 / 婦人団体 / 婦人教育 / 家庭教育学級 |
研究実績の概要 |
本年度は、戦後教育改革期に文部省が中心に推し進めた母親を対象とする家庭教育事業の実施状況を把握する為、2019年度の成果を踏まえた各地域での史料の収集・分析を行うことを研究計画に掲げていた。 しかし、コロナ禍により県をまたいでの移動が制限され、また図書館サービスの停止や、公的機関所蔵のオンライン対応困難な資料等の閲覧停止などにより、研究に不可欠な文献・史料等にアクセスすることができなかった。したがって、当初掲げた研究計画を変更し、比較的入手可能な自治体発行の『教育史』を資料に第二次世界大戦後の婦人教育の展開、婦人学級の開設と展開の取り組みを整理・分析した。 成果として、(1)戦後改革期の母親と教育をめぐる特徴は、母親(女性)への民主主義の啓蒙とそれを普及させるための団体の組織化にあり、各自治体の教育を掌る部署が中心となって婦人団体の結成、活動の促進を進めていた。(2)「婦人」を主な対象として行われる婦人学級ならびに家庭教育学級が各市区町村で開かれた。そこでは、日本国憲法・教育基本法のもと新たな社会教育観を提起し、女性の封建制からの解放と主権者としての知識・能力を身につける政治教育ならびに社会教育の修養が目指された。(3)しかし講義内容を見てみると、実際の学習内容としては、①家庭生活の合理化、②家族の役割、③家庭教育の教育的機能、④しつけのあり方、⑤地域社会と家庭教育の関係等が主に開講されていた。良妻賢母主義の枠組みのなかでの母親(女性)の教育の強化に主眼が置かれたものであり、「民主主義の啓蒙」とは隔たりが生じたものであったことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
「研究実績の概要」でも述べたように、世界的な新型コロナウイルス感染拡大により、県をまたいでの移動の制限、図書館サービスの停止や、公的機関所蔵のオンライン対応困難な資料等の閲覧停止などが長期化したことにより、研究に不可欠な文献・史料等にアクセスすることができなかった。 急遽、コロナ禍でも可能な調査・分析へと変更を試みたが、当初予定していた令和元年度の成果を踏まえた各地域での史料の収集・分析研究内容は殆ど遂行することができていない。
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今後の研究の推進方策 |
令和3年度は、昨年度実施できなかった各自治体での史料調査とそれに基づいたフィールドワークの準備に専念する計画にある。コロナ禍はまだまだ続くことが予想されるが、調査対象地域の公文書館、図書館、教育センター等が所蔵する資料の公開・閲覧可否の状況をこまめに確認し、アクセス可能な調査地から順次、資料や表簿類の収集・分析を行う予定である。 本研究は、戦後教育改革期における家庭教育施策とその施策の受け手であった母親のオーラルヒストリーから、当時の施策が当事者の子育て意識に与えた影響を明らかにすることを目的としている。そこで、フィールドワークの準備として、調査で得られた知見を研究分担者らと共有し、オーラルヒストリー収集時のインタビューガイドを作成していく。また予備調査として、オンライン形式の質問紙調査を作成・実施する。集めたデータは、その都度全員で検討し、確認や詳細な情報が必要な部分を整理し、次年度実施予定のインタビュー内容に反映できるよう精査する。 研究の経過や成果については関連学会、研究会にて発表し、諸氏の批判を得ることで、さらなる応用展開につなげることとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては、コロナ禍により県をまたいでの移動の制限、図書館サービスの停止や、公的機関所蔵のオンライン対応困難な資料等の閲覧停止などが長期化したことで、研究に不可欠な文献・史料等にアクセスすることができなかったことが主たる理由である。 使用計画としては、①現在調査閲覧ができない史料所蔵機関での調査が可能になり次第、予定していた調査を実施する、②オンライン形式の質問紙調査を実施する、③残りの次年度使用額は、関係図書の購入に振り分ける。
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