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2020 年度 実施状況報告書

園庭環境の変化が遊び行動に及ぼす影響:エコロジカルマップによる遊びの可視化から

研究課題

研究課題/領域番号 19K02631
研究機関聖泉大学

研究代表者

炭谷 将史  聖泉大学, 人間学部, 教授 (20410962)

研究分担者 奥田 援史  滋賀大学, 教職大学院, 教授 (10233454)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード園庭 / 遊び / アフォーダンス / 遊具 / 砂場 / 活動量
研究実績の概要

(1)当初計画:当初計画において,令和2年度は園庭環境の改変,測定,観察,分析を行う予定であった。特に分析では,データに基づいたエコロジカルマップを作成して,遊びの変容が環境のどのような特性・変化と結びついていたかを明らかにすることを計画していた。
(2)今年度の実施状況:令和2年度はコロナ禍において園庭に実際に行けなかったため,すでに撮影を済ませていた動画の分析,論文の執筆を中心行った。園庭レイアウトを変更したことによって活動量や遊び方のバリエーションが増加した観察結果の個別事例をさらに分析した。その結果を論文としてまとめ,国内外に投稿し,国際誌に掲載されることになった。本研究で園庭のレイアウトを変更したことで,活動量が増加し,遊び方が多様になることを明らかにした(Sumiya & Nonaka, 2021)。研究参加者6名の活動量を計測した結果,砂場エリア,オープンエリアなどで活動量が有意に増加した。また,園庭内の移動にも変化が確認された。園庭を改変する前はある特定のエリア間の移動が有意に多く,画一的な園庭の使い方をしていた様子が確認されたが,園庭の改変によってその傾向がなくなり,有意に移動が多い,または少ないルートが減少した。
(3)研究の意義・重要性:近年,安全面を重視しすぎるあまり,子どもたちにとって楽しいとは言えない環境に子どもを押し込めているのではないかという懸念が世界的に指摘されている(Malone, 2007)。そのため,幼児が長い時間を過ごす幼児施設,特に外遊びに関しては園庭の重要性が指摘できる。本研究は,園庭の遊具を買い足すとか,特別な遊具を置くということをしなくても,レイアウトの工夫によって園児にとって楽しい園庭を作ることができる可能性を示唆したと言える。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

1年目に予定以上に進めることができたので,令和2年度のコロナ禍による影響は大きくは受けなかった。令和2年度はすでに撮影を済ませていた動画の分析,論文の執筆を中心行った。園庭レイアウトを変更したことによって活動量や遊び方のバリエーションが増加した観察結果を分析し,その結果を論文としてまとめ,国内外に投稿し,国際誌に掲載されることになった(国内は現在査読審査中)。
園庭に置かれている遊具のレイアウトを変更した結果,活動量が増加し,遊び方が多様になることを明らかにした(Sumiya & Nonaka, 2021)。研究参加者6名の活動量を計測した結果,砂場エリア,オープンエリアなどで活動量が有意に増加した。砂場エリアでは,用具(スコップやお玉など)の配置を変え,それらの遊具をより使いやすくした。また,用具置き場が隣接するエリアとの境界線になるように配置し,以前よりもより区切られた空間になるようにレイアウトした。その結果,落ち着いて遊べる環境ができ,用具を活用した遊びがより活性化した。オープンエリアでは,可動式の鉄棒や地面に描いた白線でエリアを区切るようにしたところ,新たな遊び方が発生した。園児と保育者がサッカーコートを作成し,タイヤをゴールに見立ててサッカー遊びを行っていた。また,園庭内の移動にも変化が確認された。園庭を改変する前はある特定のエリア間の移動が有意に多く,画一的な園庭の使い方をしていた様子が確認された。特に園庭中央に広がるオープンエリアとタイヤエリア間の移動,砂場と隣接するタワーエリアの移動が有意に多かった。園庭の改変後にはその傾向がなくなり,有意に移動が多い,または少ないルートが減少した。このことから,園庭のより多様な場所で園児たちが遊ぶようになり,園庭をより広く活用した傾向を示していた。

今後の研究の推進方策

令和2年度の課題として挙げていたマッピング技術の向上及びガイドラインの作成は十分にできたとは言えない。それを受けて次年度の課題としてエコロジカルマップの作成方法並びに活用方法の向上,及び研究結果の現場への応用とガイドラインの作成を令和3年度に向けた課題としたい。
(1)マッピング技術の向上
エコロジカルマップの作成は,観察・測定データに基づいて,その場所で実施可能もしくは特に具現化されていた行為可能性をプロットすることで行われる。例えば,本研究では改変前には移動路として活用されることが多かった(移動できる:locomote-able)オープンエリアはスポーツフィールドとして活用できるようになったと言える(game-able)。これを地図にプロットすることで園庭での遊びを可視化し,園庭の特徴また隣接するエリア同士の関係性,レイアウトの変更可能性を検討しやすくなるという効果が期待できる。また作成過程において保育者が園児の遊びを語り合うことで保育の質的な向上が期待できる。昨年度もマッピング技術の向上を課題としてあげていたが,令和2年度中に十分にその成果を得られることはできなかったため,令和3年度も引き続き取り組みたい。
(2)現場への応用とガイドラインの作成
本研究プロジェクトは現場での応用に直結することを企図している。今年度は実際に幼稚園・保育所・こども園において保育者の観察結果に基づいてエコロジカルマップを作成し,園庭遊びの具体的把握と遊具レイアウトの変更を実際に行い,園児の遊びの変化を明らかにすることを計画している。その実践に基づいて,ガイドラインの作成をさらに進め,現場で実際に使えるガイドラインを作成したいと考えている。

次年度使用額が生じた理由

国際学会・国内学会での発表を予定していたが,コロナ禍による社会情勢の影響を受けて,参加予定だった国際学会の中止,国内学会のオンライン開催が影響した。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2021

すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)

  • [雑誌論文] Does the spatial layout of a playground affect the play activities in young children?: A pilot study2021

    • 著者名/発表者名
      Masashi Sumiya & Tetsushi Nonaka
    • 雑誌名

      Frontiers in Psychology

      巻: 12 ページ: 1-10

    • DOI

      10.3389/fpsyg. 2021.627052.

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

URL: 

公開日: 2021-12-27  

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