研究課題/領域番号 |
19K02637
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研究機関 | 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所 |
研究代表者 |
中村 みほ 愛知県医療療育総合センター発達障害研究所, 障害システム研究部, 客員研究員 (70291945)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 語彙発達 / ウィリアムズ症候群 / 脳室周囲白質軟化症 / 自閉症スペクトラム / 非言語性コミュニケーション / 視空間認知障害 |
研究実績の概要 |
当初は脳室周囲白質軟化症(PVL)患児を主たる対象とした研究計画であったが、想定に反し、研究参加できる患児が少なく、本年度までに研究参加者が得られなかった。 そこでPVL患児に対して予定した検討(視空間認知障害を示す例で「位置や場所を表す語彙」の発達がウィリアムズ症候群(WS)患児と同様に遅れるか否か)を、自閉症スペクトラム(ASD)患児にも広げ、視空間認知障害を示すASD患児群と示さないASD患児群の語彙発達についても検討することとした。発達外来を受診する患児らの保護者にマッカーサー言語発達質問紙と、早期の非言語性コミュニケーションの発達についてのチェックリストへの記入を依頼し、マッカーサー言語発達質問紙において、理解語彙が生後18カ月レベルもしくは表出語彙が生後36か月レベルに達した時点においての領域ごとの語彙発達の確認、非言語性コミュニケーションの発達の確認、新版K式発達検査に基づく視空間認知障害の有無の確認を実施中であるが、現在は研究参加者の増加をめざしてデータ収集中であり、データ解析には 至っていない。 ASD患児の研究参加を募るにあたり、当該医療施設の性格上、「診断を希望して」受診にいたる保護者は限られており、これらの保護者においては、ASDの診断の受け入れそのものに困難を極め、「言語の調査を行うこと」が、診断の受け入れや児の特性理解および前向きな育児姿勢の支援などと必ずしも方向を一にした効果が得られないことも考えられた。また、知的発達の遅れが顕著でない方の受診が中心であるため、マッカーサー言語発達質問紙の実施は受診早期にその該当年齢となることが多く、研究参加依頼を早めに行う必要があることが多いことも課題として挙げられた。このような状況から、本来の医療、療育、育児支援の妨げにならないよう、慎重に研究参加依頼を行っているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
対象としていた脳室周囲白質軟化症を持つ患児が紹介元の医療機関で想定に反し大変少ない状況で、研究参加にいたる患児がゼロであったため。 自閉症スペクトラムを持つ児については、可能な範囲でデータ収集をしてきたが、上述の業績の概要に示したごとく、研究参加依頼を慎重に行う必要があり、データ収集は予想よりも遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の申請時においては以下の2点の解明をめざした。1)視空間認知障害を呈する脳室周囲白質軟化症(PVL)患児において、ウィリアムズ症候群(WS)患児におけると同様に「位置や場所を表す語彙」の発達が遅れることを確認できるか? これが確認できた場合、疾患横断的に「特定の認知機能(この場合視空間認知障害)の遅れ」がその関連領域の語彙獲得に影響することが明らかにできる。2)自閉症スペクトラム(ASD)様症状を呈さないPVL患児、WS患児においても共同注意の発達が遅れ、始語が遅れることを確認できるか? 確認できた場合、始語表出における共同注意の役割を再確認しうるとともに、必ずしも「社会性の遅れ」を認めない児に共同注意の遅れがありうることを疾患横断的示すこととなり、共同注意のメカニズム解明に一石を投じうる。 しかしながら、PVL患児の研究参加が困難を極める事態となった。そこで対象をASD患児に広げ、その中で視空間認知障害を示す群と示さない群を対象とすることにより、1)のテーマである、疾患横断的に「特定の認知機能(この場合視空間認知障害)の遅れ」がその関連領域の語彙獲得に影響するか否か、を明らかにすることを目指す。 2)のテーマの解明に近づくべく、PVL患児についても引き続き、参加を期待し紹介元医療機関との連携を行う。 上述の業績概要に示したごとく、当該医療機関の性格上、ASD患児保護者への研究参加依頼には配慮を要する点が課題である。対応策として、適切な臨床医療をきめ細かく親身に実施することで、保護者の理解を得られるようさらなる努力をしたいと考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初想定した研究参加者が集まらず、研究の進行が遅れていること、新型コロナウイルス感染症の全世界的な流行のため、学会の延期、webによる実施などが発生し、予定していた旅費等が発生しなかったことなどにより、想定した予算の使用にいたらなかった。 次年度は対象を広げる形で研究参加者をさらに募り、より活発に研究を実施する。 また、新型コロナウイルスの感染状況を注視し、学会等での情報収集や研究成果発信の機会を極力得るべく努力する。
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