研究課題/領域番号 |
19K02643
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
宮口 英樹 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (00290552)
|
研究分担者 |
宮口 幸治 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (20706676)
石附 智奈美 広島大学, 医系科学研究科(保), 講師 (50326435)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 認知プログラム / 境界知能 / 非行少年 |
研究実績の概要 |
本研究は、少年院収容者の中でも特に境界知能者該当する者を対象に生活自立活動能力の向上、就労支援を目指した認知トレーニングのシステム作りを目的としたものである。令和2年度は、新型コロナウィルス感染症の影響で予定していたプログラムの半分を実施するに留まった。しかし、令和元年度に研究協力施設との連携が計画以上に順調に進んだこともあり、令和2年度に計画していた研究の一部を参考データとして検討することが出来た。 受講者数は、16名を8名ずつに振り分け2グループ(A介入群,Bコントロール群)とした。令和元年度は、A,B両群の介入前、介入後の結果に留まったが、令和2年度は、介入3か月後のデータを得ることが出来た。認知機能の総合得点は、DN-CASの平均スコアでA群(終了後:103.2→3か月後100.7)B群(終了後93.9.→100.6)とプログラム終了後も維持されていることを確認することができた。令和2年度は、平成元年度で明らかになった課題について、改良を加えたプログラムを予備的に実施した。プログラム実施によって見えてきた核となる課題は以下の3点である。 ①処理速度の遅さ プログラムでは単純な情報処理課題において著しい処理速度の低下 を示した者が少なくなかった。②言葉・文書を聞き取る力の弱さ アセスメント結果から短い物語の記憶である論理的記憶課題の得点が低い者が多かった。③視覚イメージ生成力の弱さ 聞き取った言葉を視覚イメージに置き換えて情報処理を行うことは、我々が日常生活で用いている能力である。そのため、聞き取った言葉を視覚イメージに置き換える課題が必要であった。 令和2年度は、以上の3つのポイントを新た加えた改良プログラムをCグループ(8名)に予備的実施し、特に日本語版リーディングスパンテストで大学生レベルの成績に向上する対象者もいるなど得点の向上が認められた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和2年度は、新型コロナウィルス感染症の影響で予定していたプログラムの半分を実施するに留まった。しかし、令和元年度に研究協力施設との連携が計画以上に順調に進んだこともあり、令和2年度に計画していた研究の一部を参考データとして検討することが出来た。しかしながら、年度の後半は、該当施設でのプログラム実施に携わることが出来なかった。そのためやや遅れていると判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
令和元年度および令和2年度に得られた認知トレーニング結果を分析し、対象者の感覚・認知特性に合わせた、集団トレーニング、個別トレーニングが必要な認知課題を選定し、対象者が年間通して行うために最適なワークシートの組み合わせを含めたプログラムを完成させることが目的となる。予備的プログラムによって明らかになった課題は、は少年院の法務教官の負担度、時間的制約などを考慮し、トレーニングの頻度、1 回の施行時間、内容等を検証することである。特に、令和2年度で検討を行った聴覚認知情報処理障害の検査および介入方法をどのようにプログラムに取り入れるかが焦点となる。 プログラムの再検討には申請者、研究分担者、研究協力者に加え、広島県内の就労支援、就労移行支援事業所の作業療法士等にも意見をもらいながら進める。新型コロナウィルス感染症の状況にもよるが次年度以降の全国の他施設および矯正施設以外での活用も視野に入れる。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナ感染症の影響で計画していた施設での出入りが制限された影響でプログラムの半分が行えなかった。また、国際学会(フィリピン)、国内学会での発表を予定していたが延期となり旅費の使用も予測より少なくなった。 次年度の感染拡大の状況にもよるが、最終年度に特に残りのプログラムを計画どおりに実行できるように準備を進めている。
|