研究課題/領域番号 |
19K02646
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
山際 勇一郎 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (00230342)
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研究分担者 |
渡邊 弥生 法政大学, 文学部, 教授 (00210956)
畠山 久 法政大学, 情報メディア教育研究センター, 講師 (20725882)
高 向山 常葉大学, 健康プロデュース学部, 准教授 (60410495)
梅崎 高行 甲南女子大学, 人間科学部, 准教授 (00350439)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 子育てスキル / 発達診断 / e-learning |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,子育て支援のために情報端末を利用した発達診断と子育てスキルのe-learningシステムの構築と,システム利用によって継続的データの蓄積によるテストの妥当性の検証の可能性を探ることである。 子どもの身体的な発達に関係する心理社会的要因については,梅崎(2020)が養育者の役割から検討を行った。また,子どもの「読み書き」と「自己コントロール」の発達について,養育者の態度の影響について検討を行った(梅崎ら,2020)。これらは,子どもの発達診の断検査項目の妥当性についての基礎資料となる。携帯端末システムのニーズについては,高ら(2020)が保育現場での意識調査を行っており,政府機関などによるICT化の導入要請状況に反して,情報格差等の点から現場での意識が多様であることが明らかとなっている。このことは改めてe-learningシステムのニーズの把握の必要性を示していることを示している。子育てスキルについては,渡辺(2021,2020)が教育現場の対人関係や子育てにおけるソーシャルスキルやそのトレーニングの重要性などについて議論している。システムそのものについて,畠山ら(2021)が,オンラインテストシステムにおいて,非同期の自動保存機能の実装について研究を行い,システムとしては項目選定とフィードバック内容の検討,および画面のデザインを残すのみとなっている。以上のように,課題に即した研究を多角的に行っている。 最後に,本システムの構築により,子どもの発達の程度の理解と養育不安の解消の支援が可能になると考えられるが,昨年2月以来,世界的なコロナ禍にあり,養育不安の様相が異なってきており(小湊,2020),自粛生活による子育て不安への影響も今後の診断基準作成のために検討に加える必要があると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
現在,研究の焦点はシステムの構築とその実証の2つに概ね分けることができる。その進捗状況は以下である。 まず,システム構築に関して,発達診断・子育てスキルテスト開発は,基本的項目の収集作業は一部の尺度を除き概ね終了している。今後はこれらの妥当性の検討と項目の提示順序・提示の反復等の検討を行う。次に,発達診断とe-learningのシステム開発について基本プログラムの作成は終了し,また,プログラム稼働のためのサーバー等の準備は進んでおり,現在シミュレーションが可能となっている。今後は診断項目の精選とプログラム画面のデザインの検討を行う。後者については新たにデザイナーと調整を行っている。これらの検討作業については意見交換を行う機会が限定されていることもあり若干の遅れがある。 システムの実証については,システム構築終了後,ユーザーへのプログラム提供による実証データの蓄積とニーズ調査の実施を行う必要がある。プログラムへの参加者とニーズ調査の対象者については,当初の研究計画では子どもと養育者の参加イベントや保育所等での募集を予定していたが,現時点ではそれらが不可能となっている。そのため参加対象者の確保の見通しが立っておらず,かなり遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
システム構築はある程度進んでおり,発達診断テストと子育てスキルテストの原案が作成されているので,それらの精選と項目の提示順等およびユーザーへのフィードバック内容の検討を行い,e-learningシステムの完成を目指す。加えて,提示・フィードバックなどのプログラム等は概ねできあがっているので,それらのデザイン等のシステム全体の構築を行う。 これらの完成後に,作成したテストを使用してe-learningシステムの初期構成を行い,社会状況を考慮しながら,保健所の定期健康診断や子育てイベント等でのシステムの試用を行う予定である。加えてやはり社会状況にもよるが養育者に対するニーズ等の調査の実施を行い,初期データベースの補助資料を作成する。
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次年度使用額が生じた理由 |
全体として,e-learningシステム作成の項目選定等などいわゆるソフトの部分については進行している。また,e-learningシステムの画面作成などの基本プログラムについても概ね仕上がりつつある。 今後は,まずシステムの内容に関して診断テストの精選を行うが,コロナ感染状況から生じる子育て不安に関する調査等の必要性について議論を行う。これは研究開始時に想定していなかった問題である。 次に,画面のデザイン等のプログラムのインターフェイスの最終調整を行うが,これらに対する意匠料・人件費が必要である。 プログラム完成後の重要な課題はシステムの試用と効果測定である。これに関して対象者(養育者等)の選定とニーズ調査が必要であり,十分大きな予算を要する。ただし,この点については社会状況を考慮しながら行わなければならず不確定な部分が大きい。対象者の確保等においては保育所や子育てイベントにおける対面の試用だけでなく,webによる参加募集やプールされたパネラーの利用な多角的なアプローチが必要となり,それに応じた予算も必要となる。
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