研究課題/領域番号 |
19K02651
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
和田上 貴昭 日本女子大学, 家政学部, 准教授 (30386289)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 外国にルーツのある保護者 / 保育士の認識 / 情報伝達への配慮 / 保護者との関係構築 / 文化への配慮 |
研究実績の概要 |
2019年度は、当初の計画において保護者調査および保育者調査を行う予定であった。保護者調査は外国で生まれ育った方で自身のお子さんが保育所に通う方(外国にルーツのある保護者)に対する聞き取り調査であり、保育者調査は外国にルーツのある保護者に対する支援の経験のある保育者への聞き取り調査である。保護者調査については、対象を特定している段階であり、本年度は調査を見送った。保育者調査については、協力者を募ることや実際の保育現場における支援の実際を確認した上で調査を実施する必要があると考え、在留外国人人口が高い自治体(市区)一つを選定し(A自治体とする)、A自治体のすべての保育所を対象とした質問紙調査を行った。実施時期は2020年2月から3月で、各保育所に10枚の質問紙を送付し、それぞれの保育所の常勤保育士に配布、回答いただき、返送していただく形をとった。124か所×10枚の1,240枚配布。回収数126枚であった。回収率が低かったため、統計処理は行わず、記載された事例への質的分析を行った。分析の結果,保育士が下記の必要性を認識していることが示唆された。(1)保護者への情報伝達への配慮,(2)保護者との関係性の構築,(3)背景にある生活習慣や宗教などへの配慮,である。保育士は外国にルーツのある保護者に対して個別性の尊重の観点を持ち,支援を行っていると言える。ただし社会資源の活用や他機関との連携については十分な認識がないことが示唆された。成果については2020年度に学会誌に投稿予定である。 さらに海外における子育ての状況に関して明らかにするために2020年2月にベトナムにおいて聞き取り調査を行う予定であったが、新型コロナウィルスの影響により断念した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究開始時は、2019-2020年度にかけて保護者と保育者を対象に聞き取り調査を実施するとともに、国内外の外国につながりのある子育て家庭に対する自治体の支援についての先行研究の整理を行い、最新の動向をおさえると予定をしていた。しかし、政府の外国人労働者受け入れ促進の方針が示され、取り組みが行われたことに伴い、調査対象の再検討を行い、調査項目の検討や現状の保育現場の取り組みについて明らかにすることが優先されると考え、研究計画の見直しを行うこととなった。保護者と保育者を対象とした聞き取り調査の前に保育者の取り組みを明確にすることで調査項目が明らかになると考えた。そのため聞き取り調査は2021年度開始することとした。 研究の進め方に変更は生じたものの、上記課題の整理は研究全体の課題の整理にもつながり、聞き取り調査においても有効に活用できる視点を得ることができたと考える。 また、海外で子育てを行う日本人の様子について調査を行う予定であったが、コロナウイルスの影響により中止とせざるを得なかった。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、(1)保護者及び保育者への聞き取り調査、(2)先駆的な実践を行っている保育所や行政を対象とした調査、(3)先行研究と政策展開についての整理、(4)他国(ドイツおよびベトナムを予定)における子育て様式および子育て支援施策の状況調査を行う。これらを通じて異国での子育てにおいて何が障壁になるのか仮説を立てることができる。また、すでに実施した調査について研究論文として、関係学会の研究誌に投稿する予定である。 2021年度以降は上記取り組みを集約し、保育所におけるプログラムの検討を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2月にベトナムにおける在留邦人の子育て家庭と、ベトナム人の子育てについてハノイ大学の研究者にインタビューを行う予定であったが、コロナウイルスの影響により、中止せざるを得なかったため、渡航費、宿泊費等の費用を執行できなかった。 予定していた海外調査については2020年度に(コロナウイルスの影響が収まった段階で)実施する。
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