研究課題/領域番号 |
19K02654
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研究機関 | 愛知淑徳大学 |
研究代表者 |
山下 泰枝 (岡田泰枝) 愛知淑徳大学, 福祉貢献学部, 准教授 (90710541)
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研究分担者 |
白石 淑江 愛知淑徳大学, 愛知淑徳大学, 客員研究員 (10154361)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 保育の質 / 教育的ドキュメンテーション / 保育施設の自己評価 |
研究実績の概要 |
スウェーデンの就学前学校におけるteaching(以下教えると表記)のベースとなっているのは、子どもたちの遊びである。子どもたちの遊びをどのようなものとして捉え、遊びにおいて保育者がどのような姿勢で関わるべきであるのかを明らかにすることがすなわち教えるという保育者の働きかけの在り方につながるという捉え方のもと、スウェーデンにおける教えることの理論的枠組みを文献資料から整理した。 また、就学前学校において教育的ドキュメンテーションがどのような役割を果たす存在であるのか、教育的ドキュメンテーションが子どもたちと保育実践とをどのようにつないでいるのか、教育的ドキュメンテーションが子どもたちや保育者をどのような存在として位置づけているのかということを文献資料から整理した。このことによって、教育的ドキュメンテーションが就学前学校における子どもたちの学びにおいてどのように作用するのかということを明らかにできた。 さらに、保育者が実践を進めていく際、どのような観点を持つべきであるのか、実践を行う際その観点をどこまで意識できているのかということを自己評価する過程について、ある就学前学校の保育実践事例の分析をしながら明らかにできた。これは就学前学校の校長とオンラインミーティングを行うことで実現した。オンラインミーティングによって自己評価における教育的ドキュメンテーションの活用についても一定の理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症の世界的な拡大の継続により、令和3年度も訪瑞しての現地聞き取り調査が実施できていない。計画していた、保育現場において査察がどのような意義を持つのかといったことや自治体レベルでの学校査察の在り方等について等を聞き取り調査し学校査察の在り方から得られる保育の質向上への取り組みの模索が実施できないままとなっており、予定通りには進んでいない。 また、教育的ドキュメンテーションと保育の質との関わりについて、保育実践への子どもの関わりや子どもが得ている学びについてどのような視点で受け止めていくのかということについて、文献資料からまとめるにとどまっている。 令和4年度も引き続き、研究協力者とのオンラインミーティングや文献資料を通して理論的に深めるとともに、オンラインミーティングを活用し現地の保育実践者からの情報提供も受けながら明らかになったことをまとめていく。
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今後の研究の推進方策 |
令和4年度は白石がスウェーデンに赴き、聞き取り調査を行う予定である。 調査対象は、公立の就学前学校、民間の就学前学校、学校庁が新しく創設した幼児教育の質をサポートする部署(英訳:Dialogue Quality)である。 調査内容はそれぞれ次のようである。就学前学校へは、各学校で実践している保育内容とプロセスを行うにあたって学校査察局がどのような観点で査察を行っていると受け止めているのか、その際教育的ドキュメンテーションとの関係をどう受け止めているのか、自己評価についてどのような内容を取り入れているのかという点を調査する。学校庁の新設部署へは、部署の概要及び今後の業務内容の展望を調査する。 また、就学前学校には保育の質の向上に組織的に取り組むことが課せられているが、その手段の一つとして学校スタッフそれぞれの自己評価を取り入れている学校が多い。独自で方法論を展開しシステムを構築している学校、開発されたシステムを活用している学校様々であるが、就学前学校の自己評価の在り方についても聞き取り調査を行い、保育の質の向上のための取り組みとしてまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
令和3年度も引き続き新型コロナ感染症の世界的な感染拡大は継続しており、予定していたスウェーデンを訪れて行う現地関係者からの聞き取り調査を実施できなかった。次年度使用額が生じた理由は現地調査の未実施であるところが大きい。今後は主にオンラインミーティングによる聞き取り調査や研究会を活用しながら、スウェーデンにおける保育の質についての理論的構築や保育実践の場における質向上への取組の実際について理解を深め、明らかにできた内容のまとめを行う。その際、現地の研究協力者や保育実践者から得られた文献資料も参考にしながら行うが、スウェーデン語の資料については翻訳者からの協力を得ながら行うため、次年度使用額の一部をその謝金に充てる。 一方で白石の訪瑞の予定が実現する可能性があるので、現地の研究者や保育関係者への聞き取り調査の内容を今一度整理し、訪瑞の機会をより有益なものとできるよう進める。 今までに得たスウェーデンの保育の質に関する理論的な理解と実践とを結びつけ、そこに学校査察と教育的ドキュメンテーションがどのように位置付き、どう作用しているのかという視点で研究のまとめを進められるようにする。
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