本研究は、児童生徒の言語発達と作文技術の系統化を融合した作文カリキュラムとその評価法を開発することを目的としたものである。最終年度は、以下の2点の研究を行った。 (1)小中学校国語科における「情報の扱い方に関する事項」に着目し、情報活用を前提とした言語技能や作文技術の諸要素を抽出した。それを小中学校の発達段階ごとに配置し、国語科教諭らと協働して授業開発を行った。このような言語発達を見通した段階的・系統的な授業モデルを一冊の編著にまとめ、成果として発表した。 (2)評価法の開発にあたり、小中学校の国語教師を対象に作文評価パフォーマンスに関する調査を行った。特に論理的な文章の論証構造に焦点を当て、教師が論証の不十分さをどのように評価するのか、またその評価をどのような表現で伝えようとするのかについて分析した。その結果、論証の不十分さへの評価が少なく、文や構成等の形式面でのコメントや、学習者の経験に関わるコメントが多いことがわかった。この結果から、論理表現に関わる評価言の開発が今後の作文指導において必要となることを指摘した。 研究期間全体を通しての研究成果として、以下の3点をあげる。①国際比較による児童生徒の作文技術の発達過程の分析:日本と英国の児童作文データを「相手意識」と「コミュニケーション方略」の観点から分析した。学年が上がるにつれて、日本人児童は文構造レベルでの表現や多様なコミュニケーション方略を用いることを明らかにした。②作文カリキュラムの分析と開発:国内外の作文教育関連図書を収集・比較し、作文技術の配列について検討した。また、情報活用を前提とした授業モデルを開発し発表した。③作文評価法の調査と検討:作文の自己評価に関わるメタ認知の発達過程を調査した。また、論理的文章に対する教師の評価パフォーマンスを分析し、作文指導における評価言の開発が必要であることを指摘した。
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